2トンや3トンもある自動車を支え、「走る・止まる・曲がる」といった車の基本的な動きから、路面や風圧などからの衝撃を吸収するといった働きまで、自動車のパーツとして極めて重要な役割を果たしているタイヤ。
今回は、そんな大切な役目を担っているタイヤについて、経年劣化などが原因で起こりやすい、ひび割れ、亀裂、スリップサイン、パンクを中心に、タイヤそのものの寿命や交換費用などについても見ていきたいと思います。
では、早速見ていきましょう。
タイヤの寿命の目安を「法律」から見極める
のっけから”カタイ”話になってしまって申し訳ないのですが、実は自動車のタイヤは法律や関係する細目・規定などにより、その保安基準や点検基準などが、かなり細かく定められておりまして、例えば、自動車のタイヤの溝は「1.6mm」以上の深さが必要!なんていう風に決められていたりします。
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 -走行装置- 第 167条 4 (2) |
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<中略>、タイヤの接地部の全幅(ラグ型タイヤにあっては、タイヤの 接地部の中心線にそれぞれ全幅の4分の1)にわたり滑り止めのために施さ れている凹部(サイピング、プラットフォーム及びウエア・インジケータ の部分を除く。)のいずれの部分においても1.6mm(二輪自動車及び側車付 二輪自動車に備えるものにあっては、0.8mm)以上の深さを有すること。 |
参考/道路運送車両法
なお、この「1.6mm」というのはタイヤの残り溝を測る目安としては、大切なポイントの一つとなっていまして、タイヤメーカーは、タイヤの溝が「1.6mm」以下になった場合、”これ以上このタイヤで走るのは法令違反ですよ”ということをドライバーに知らせるために「スリップサイン」と呼ばれる目印のようなものが出てくるようにしています。
スリップサインが見つかると、ただちに、法令違反で捕まるということはありませんが、車検を基本的には通すことはできませんので、スリップサインが出ていたら、タイヤを交換せざるを得ません。(安全上の観点からも交換した方がいいですよね!)
そして、タイヤの「残り溝」も含めて、他にも運輸省がタイヤについて定めている基準がありまして、それを簡潔にまとめたものが下記になります。
自家用乗用自動車等の日常点検基準 | |
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1 | タイヤの空気圧が適当であること |
2 | 亀裂及び損傷がないこと |
3 | 異状な摩耗がないこと |
4 | 溝の深さが十分であること |
ちなみに、自動車業界の片隅に身を置く筆者に対して、周囲の友人などから「タイヤの寿命って、どこを見て確認すればいいの?」なんていう質問をされることがあるのですが、そんなときは、上記の4つの項目がタイヤの寿命を見極める上での重要なポイントとして、回答しています。
では、それぞれの項目について、もう少し詳しく見ていきましょう。
タイヤのひび割れの原因とは?放置しておくとパンクの可能性も・・
車に乗っている人の多くが加入している「ロードサービス」ですが、救援依頼理由(※)で毎年、「タイヤのパンク」が上位にランクインしているのはご存知でしょうか?
※ロードサービス大手の「JAF」によれば、平成26年度のロードサービス依頼救援件数でタイヤのパンク(バースト、空気圧不足含む)は、一般道路で2位、高速道路では1位という結果になっているとのこと。
そして、そんなパンク(破裂)を引き起こしかねない、きっかけとなるのが「ひび割れ」です。
少し分かりにくいですが、所々にひび割れが点在しています。
では、そもそもタイヤのひび割れはなぜ起こるのでしょうか?
タイヤのひび割れの原因 | |
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1 | 経年劣化 |
2 | 空気圧の不足 |
3 | つや出し剤やタイヤワックスなどの影響 |
4 | 荷重による負荷 |
その原因を簡潔にまとめたものが上記の表になりまして、それぞれをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
〇経年劣化によるひび割れ
タイヤはもともと「ゴム」でできているのは、ご存知の通りですが、自動車用のタイヤには、柔軟性を保つための特殊な加工が施されていまして、普通のゴムに比べると、様々な路面を走るといった過酷な要求に対して、柔軟に対応することができるようになっています。
しかし、そんな耐久性に優れた自動車用のタイヤも、寒冷地や日差しの強い中のドライブを繰り返すことで、紫外線や熱、寒さなどの影響を受けて、柔軟性を保つための油成分の揮発や収縮などが起こり、その”ダメージ”が「ひび割れ」という形で表れてきます。
また、荒い運転を繰り返したり、日光を長時間浴びるような環境で車を保管したりすることも、経年劣化によるひび割れを生みやすいと言えます。
経年劣化によるタイヤの寿命は、自動車の利用状況や保管状況によりますが、約3~6年ぐらいが一般的な数値になるかと思います。
〇空気圧の不足とひび割れ
自動車に限ったことではありませんが、バイク、自転車などと同様、タイヤの空気圧が下がっていると、タイヤに与えるダメージは大きくなります。
特に自動車の場合は、2トン近くの重さを支えているので、空気圧の不足は「ひび割れ」を生み大きな原因になりかねません。
そして、空気圧が不足した状態で、ひび割れが積み重なり、そんな状態で高速道路を走ったりすると、最悪のケースでは、タイヤの破裂(バースト)が起こり「パンク」という事態を招いてしまうことにもなりかねません。
〇つや出し剤やタイヤワックスなどの影響
ピカピカに磨き上げた車でドライブするのは、とても気持ちのいいものですが、タイヤにつけるつや出し剤やタイヤワックスなども、タイヤの劣化、ひび割れの原因になることがあります。
全てのつや出し剤やタイヤワックスがダメということでは決してありませんが、中にはタイヤの劣化を早めてしまい、ひび割れの原因になる製品もあったりします。
過度の使用を控えたり、使用する製品の成分などを確認した上での利用がタイヤにひび割れを起こさないためのポイントになります。
〇荷重による負荷
トラックに荷重が定められているように、自動車にも荷重が定められていますが、度重なる荷重による負荷はタイヤのひび割れの原因になり得ます。
空気圧とも関係してきますが、日常的に重いものを載せて走ることが多い場合は、どうしても、ひび割れが起こりやすくなってしまいます。
タイヤの亀裂の原因とは?サイドウォールの傷はパンクの可能性も・・
では、続いてはパンクの「亀裂」について見ていきたいと思います。
ひび割れの多くの原因が、経年劣化を理由とするものだったのに対して、亀裂の方は、どちらかと言いますと、「外傷」的なケースが多くなっています。
例えば、分かりやすい例としては、道路上に転がっている小石が飛んできて、タイヤの「サイドウォール」と呼ばれる部分に衝突して、亀裂が発生するというケースがあります。
その他にも、砂利道などのオフロードを走ったり、あるいは固さのある障害物に”擦って”しまって、そのときにタイヤに亀裂ができてしまうというケースもあります。
また、一番注意しなくてはいけないのは、「コブ」のような形でサイドウォールが歪んでしまっているときです。
このケースの場合、タイヤ内部の重要な部分に損傷が及んでいる可能性がありますので、ただちにタイヤ交換をする必要があります。
なお、コブができていなくても、亀裂も、ひび割れと同様、そのまま放置しておきますと最悪の場合、高速などを走った際に、パンクというケースに至ることもあります。
タイヤの溝がなくなる原因とは?残り溝がないことによる危険性
先ほど、タイヤの溝が「1.6mm」以下の状態で道路を走行することは法律違反であるという説明をさせて頂きましたが、そもそも、なぜタイヤの溝はなくなってしまうのでしょうか?
タイヤの溝が減る原因には、大きく分けて3タイプがありまして、「車の乗り方」、「タイヤ周りのトラブル」、「タイヤそのものに原因」があるといったタイプです。
そして、それらをまとめたものが下記の表になります。
タイヤの溝の減り方が早くなる原因 | |
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1 | 急発進や急停止が多い |
2 | コーナリングや右左折の速度が速い |
3 | コーナリングでのハンドリングが深い |
4 | 切り返しや車庫入れなどで完全に停止したままハンドルを切ることが多い |
5 | タイヤそのものの品質が低い |
6 | アライメントに異常がある |
7 | ベアリングやサスペンションの損傷など |
〇タイヤに負担が掛かる乗り方はタイヤの溝を減らす
車の乗り方や扱い方は、その人の性格が出ると言われますが、そういう意味では、タイヤの減り方は、そのドライバーがどんな”クセ”があるのかを測るモノサシとなることがあります。
前輪の溝が無くなるのが早い人、後輪の溝がなくなるのが早い人など、それぞれですが、ドライバーのクセはタイヤの溝を減らす大きな原因の一つです。
〇タイヤそのものの品質
一般的に新車で車を購入したときの純正タイヤは市販されているタイヤに比べると、寿命が長いと言われていまして、約5年前後が一つの目安とされています。
一方、市販のタイヤの寿命は、廉価なタイヤの場合、2~3年とも言われる商品もありまして、丁寧に運転していても、タイヤの品質によっては溝が早く減ってしまうことがあったります。
〇タイヤ周りのトラブル
過去に、かなり段差のある道路を走行した、障害物にぶつかったなどが原因で、サスペンションやベアリングなどのタイヤ周りにトラブルを抱えていて、それがもとでタイヤの減りが早くなってしまう場合もあります。
誤解を恐れずに言えば、車の運転しているときにタイヤを回すという動作が正しく機能していないということになります。
車を停止させたり、コーナーを曲がったりするときに、タイヤの周辺から”異音”などが発生しているときは、トラブルが発生している可能性が高いです。
〇溝がないタイヤの危険性~ハイドロプレーニング現象~
タイヤの溝が磨耗して溝がなくなると、タイヤの排水性が悪くなってしまい、タイヤと路面の間の水を排水しきれなくなり、ブレーキをかけたときに車が停まるまでの距離が長くなってしまうことを「ハイドロプレーニング現象」と呼びまして、この現象が公道で出てしまうと、極めて危険です。
ハイドロプレーニング現象が出てしまう原因は、溝がないだけではなく、空気圧が低いことも関係していまして、タイヤそのものの経年劣化による危険性とも言えます。
タイヤの寿命の目安はどれくらい?
ここまでタイヤが劣化し、寿命を招く主な原因について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
タイヤの寿命は経年劣化だけでなく、ドライバーの運転のクセや空気の補充などのメンテナンス、過去のトラブルなどが複合的に影響しているために、個体差がかなりあることがお分かり頂けたかと思います。
また仮に、特殊な要因がなかったとしても、単純にある程度の年数と走行距離を走ると、タイヤは寿命を迎えてしますので、丁寧にさえ乗っていれば、寿命をいつまでも伸ばせるというものではないという側面もあります。
新車購入時からの純正タイヤであれば、約5年前後、市販のタイヤであれば約3年前後がタイヤ交換のタイミングの目安となるでしょう。
さらなるトラブルを招く前に・・・
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タイヤの交換費用とまとめ
最後に、タイヤの交換費用についても触れておきたいと思います。
まずタイヤそのものについては、タイヤメーカーによりまして、かなり開きがあるという状況になっています。
例えば、タイヤ通販大手の「オートウェイ」の人気ランキングを見てみますと、トーヨータイヤ、ブリジストン、グッドイヤーなどの大手メーカーで、1本あたり9,000~20,000円、また、大手以外の低価格品ですと1本あたり2,000円~5,000円ぐらいといった感じです。
また、それとは別にタイヤ交換をガソリンスタンドなどでお願いする場合は、人件費となる工賃、さらにホイールも変更する場合はホイール代、そしてタイヤ周りのサスペンションやベアリングなどにトラブルがあって、それを修理した場合は、その費用も必要になってきます。
「タイヤがそろそろ寿命かなぁ・・」と感じたときは、まずはタイヤ交換をするにあたって、総額で、どれくらいの費用がかかりそうなのかということを把握してみることをおすすめします。
車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に判断したいところですね。