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居眠り運転の点数と罰金および罰則~過労運転と安全運転義務違反~

居眠り運転で自損事故や人身事故・・・テレビやネットのニュースなどでも報道されることが多いですが、実は居眠り運転は「過労運転」と「安全運転義務違反」のどちらで処分されるかにより、違反点数と罰金及び罰則は大きく異なってきます。

今回は「過労運転」と「安全運転義務違反」で受ける処分について、詳しく見ていきたいと思います。

居眠り運転-過労運転と安全運転義務違反-

居眠り運転の原因が、仕事や風邪薬の服用などによる明らかな「睡眠不足」などと認められる場合、捕まったときの状況にもよりますが、「過労運転」と判断される可能性があります。

では、過労運転とは一体、何を意味するのでしょうか?

道路交通法第66条(過労運転等の禁止)によれば・・・

 

「何人も前条第1項に規定する場合のほか過労病気薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。 」

 

と記載がありまして、”正常に運転ができないおそれがある状態”のことを指していると考えられます。

具体的なケースとして、居眠り運転で事故を起こしその後、「過労運転」で書類送検されたケースなどがあります。

浜松6人死傷「居眠りした」 過労運転疑いで男追送検
浜松市内で12日、トラックがオートバイや乗用車に追突し6人が死傷した事故で、静岡県警に自動車運転処罰法違反(過失致死)で逮捕、送検された大阪市のトラック運転手、堀川貴義容疑者(55)が調べに「居眠りしていた」と供述していることが28日、捜査関係者への取材で分かった。県警は同日までに道交法違反(過労運転等)の疑いで堀川容疑者を追送検した。

 捜査関係者によると、堀川容疑者はトラックに郵便物を積み込んで、12日午前0時すぎに大阪市内を出発、静岡市に向かっていた。事故は午前5時50分ごろ、浜松市西区の国道1号交差点で発生。県警の調べに対し「運転中に居眠りしてしまった」などと供述したという。

 堀川容疑者は前日非番で勤務していなかったといい、県警は勤務先の運送会社の労務管理に問題はなかったとみている。

産経ニュース-2015.8.28-

ニュースにもありますように、居眠り運転が過労運転であったと認められるのは、多くの場合、トラックなど仕事上の運転での適用だと考えられますが、法律上は車両については特に規定しておりませんので、普通自動車でも検察が過労運転として起訴し裁判で認められれば、過労運転となります。

ただ、ちょっとした居眠り運転が過労運転と認められることは考えにくく、よほどのことがなければ、安全運転義務違反となるでしょう。

居眠り運転の違反点数

では、続いて過労運転で捕まったときの違反点数と行政処分について、「過労運転」と「安全運転義務違反」、それぞれのケースを見ていきましょう。

〇過労運転であることが認められると違反点数は「25点」

〇安全運転義務違反の違反点数は「2点」

行政処分については下記の通り、法律で定められています。

一般違反行為に付する基礎点数点数
過労運転、酒酔い運転、麻薬等運転又は共同危険行為等禁止違反25点
酒気帯び(0.25以上)無免許運転23点
酒気帯び(0.25未満)無免許運転20点
無免許運転又は酒気帯び(0.25以上)速度超過(50以上)等19点
酒気帯び(0.25以上)速度超過(30(高速40)以上50未満)等16点
酒気帯び(0.25以上)速度超過(25以上30(高速40)未満)等15点
酒気帯び(0.25以上)速度超過(25未満)等14点
酒気帯び運転(0.25以上)、過労運転等又は酒気帯び(0.25未満)速度超過(50以上)等13点
大型自動車等無資格運転、仮免許運転違反又は速度超過(50以上)12点
酒気帯び(0.25未満)速度超過(30(高速40)以上50未満)等9点
酒気帯び(0.25未満)速度超過(25以上30(高速40)未満)等8点
酒気帯び(0.25未満)速度超過(25未満)等7点
無車検運行又は無保険運行、速度超過(30(高速40)以上50未満)、積載物重量制限超過(大型等10割以上)、酒気帯び運転(0.25未満)6点
速度超過(25以上30(高速40)未満)、放置駐車違反(駐停車禁止場所等)など3点
安全運転義務違反、信号無視など2点
混雑緩和措置命令違反、通行許可条件違反、通行帯違反など1点
免停期間前歴なし1回2回3回
30日6~8点
60日9~11点4~5点
90日12~14点6~7点2点
120日免許取消8~9点3点2点
150日免許取消免許取消4点3点
180日免許取消免許取消免許取消免許取消

参考/道路交通法施行令

ご覧頂いた通り、過労運転の違反点数25点となりますと、違反の前歴なしでも一発で免許が取り消しとなってしまいます。

安全運転義務違反の場合は、2回以上の前歴がなければ行政処分はありません。

なお、安全運転義務違反の他に違反があった場合の違反点数はどうなるのかという点ですが、その違反点数が高い方の違反点数が課されるということになります。

例えば、速度超過(25以上30(高速40)未満)の3点と安全運転義務違反の2点という2つの違反があった場合は、点数が高い3点が違反点数として課されるということになります。

一般違反行為に付する基礎点数点数
酒酔い運転、麻薬等運転又は共同危険行為等禁止違反25点
酒気帯び(0.25以上)無免許運転23点
酒気帯び(0.25未満)無免許運転20点
無免許運転又は酒気帯び(0.25以上)速度超過(50以上)等19点
酒気帯び(0.25以上)速度超過(30(高速40)以上50未満)等16点
酒気帯び(0.25以上)速度超過(25以上30(高速40)未満)等15点
酒気帯び(0.25以上)速度超過(25未満)等14点
酒気帯び運転(0.25以上)、過労運転等又は酒気帯び(0.25未満)速度超過(50以上)等13点
大型自動車等無資格運転、仮免許運転違反又は速度超過(50以上)12点
酒気帯び(0.25未満)速度超過(30(高速40)以上50未満)等9点
酒気帯び(0.25未満)速度超過(25以上30(高速40)未満)等8点
酒気帯び(0.25未満)速度超過(25未満)等7点
無車検運行又は無保険運行、速度超過(30(高速40)以上50未満)、積載物重量制限超過(大型等10割以上)、酒気帯び運転(0.25未満)6点
速度超過(25以上30(高速40)未満)、放置駐車違反(駐停車禁止場所等)など3点
警察官現場指示違反、信号無視など2点
混雑緩和措置命令違反、通行許可条件違反、通行帯違反など1点

参考/道路交通法施行令

ただし、下記に定められているような交通事故や危険運転、酒酔い運転などが加わると、さらに違反点数や罰金が加わることになりますので、ご注意ください。

特定違反行為の種別点数
運転殺人等又は危険運転致死等六十二点
運転傷害等(治療期間三月以上又は後遺障害)又は危険運転致傷等(治療期間三月以上又は後遺障害)五十五点
運転傷害等(治療期間三十日以上)又は危険運転致傷等(治療期間三十日以上)五十一点
運転傷害等(治療期間十五日以上)又は危険運転致傷等(治療期間十五日以上)四十八点
運転傷害等(治療期間十五日未満又は建造物損壊)又は危険運転致傷等(治療期間十五日未満)四十五点
酒酔い運転、麻薬等運転又は救護義務違反三十五点
交通事故の種別交通事故が専ら当該違反行為をした者の不注意によつて発生したものである場合における点数中欄に規定する場合以外の場合における点数
人の死亡に係る交通事故二十点十三点
人の傷害に係る交通事故(他人を傷つけたものに限る。以下この表において「傷害事故」という。)のうち、当該傷害事故に係る負傷者の負傷の治療に要する期間(当該負傷者の数が二人以上である場合にあつては、これらの者のうち最も負傷の程度が重い者の負傷の治療に要する期間とする。以下この表において「治療期間」という。)が三月以上であるもの又は後遺障害(当該負傷者の負傷が治つたとき(その症状が固定したときを含む。)における身体の障害で国家公安委員会規則で定める程度のものをいう。以下この表において同じ。)が存するもの十三点九点
傷害事故のうち、治療期間が三十日以上三月未満であるもの(後遺障害が存するものを除く。)九点六点
傷害事故のうち、治療期間が十五日以上三十日未満であるもの(後遺障害が存するものを除く。)六点四点
傷害事故のうち治療期間が十五日未満であるもの(後遺障害が存するものを除く。)又は建造物の損壊に係る交通事故三点二点

参考/道路交通法施行令

そして、過労運転以外にも違反があった場合は、「免許取り消し+1年以上の欠格期間」などの重い行政処分が待っています。

ご存じない方に説明させて頂きますと、欠格期間とは仮に自動車教習所に通って、再度免許を取得しても、決められた期間、公安委員会が免許の発行を認めないといった行政処分です。

なお、一度出されてしまった行政処分につきましては、行政処分に不服であったとしても、よほどの緊急性を認められない限り(認められることはまずありません)、その行政処分を受けた後でないと、その処分の取り消しを求めることはできません。

行政処分の取り消しについて詳しく知りたいという方は、行政事件訴訟法(参考/総務省法令データ提供システム)を参考にして頂ければと思います。

居眠り運転の罰金および罰則

では続いて、居眠り運転の罰金(反則金)および罰則について、過労運転等によって引き起こされた場合と安全運転義務違反の場合、それぞれを見ていきたいと思います。

〇過労運転の場合

刑事処分
居眠り運転が過労運転等によって引き起こされた場合1年以下の懲役又は30万円以 下の罰金

〇安全運転義務違反の場合

反則金
居眠り運転が安全運転義務違反とされた場合9,000円

※反則金は軽微な違反に対する「任意に納付する行政上の制裁金」のことで、その支払いは任意となっています。

反則金を支払えば、安全運転義務違反を認めることになり、その反則金を支払うことで安全運転義務違反に対しての刑事処分は終了となります。

一方、過労運転であることが認められた場合は、上記のような厳しい刑事処分となります。

また人身事故などを起こした場合、その罰金や罰則はさらに重くなります。

2014年5月20日に施行された「自動車運転死傷行為処罰法」では、下記の通りその刑事処分の内容を定めています。

刑事処分
危険運転致死罪準酩酊等運転と病気運転を除く1年以上20年以下の懲役
危険運転致傷罪準酩酊等運転と病気運転を除く15年以下の懲役
危険運転致死罪準酩酊等運転と病気運転15年以下の懲役
危険運転致傷罪準酩酊等運転と病気運転12年以下の懲役

居眠り運転の原因が飲酒なのか、あるいは風邪薬なのか、あるいは睡眠不足なのか、そしてそれらを引き起こす環境はどういったものだったのかなどを、裁判で総合的に判断し、罰金や罰則の内容が決まるという流れになります。

また、過労運転に加えて、次のような違反もあった場合、懲役も含めて実刑となる可能性があります。

ケース実刑について
前科や悪質な交通違反歴がある実刑の可能性が高い
執行猶予期間中裁判次第
交通事故で被害者がいる裁判次第
警察(パトカー)から逃走している裁判次第
無免許運転である裁判次第
免許書の偽造など裁判次第

そして、交通犯罪と言いましても、下される刑事処分の内容によっては、その犯罪記録は様々な公的機関で残りますので注意が必要です。

交通犯罪の記録の保管期間につきましては、

内容記録の保管期間
罰金以下の刑(罰金・拘留・科料)5年
禁錮以上の刑(死刑・懲役・禁錮)10年
(関連法 刑法27条・31条~34条 恩赦法3条・5条 少年法60条、刑法56条・57条 犯歴事務規定2条・8条・18条)

というのが目安となっていまして、市町村役場、検察庁、警察、公安委員会でそれぞれ、「犯罪者記録」として保管されることになります。

また上記はあくまで目安で、重い刑が科された場合などは、検察庁などでは、「本人死亡」まで犯罪記録として保管される場合があります。

居眠り運転で交通事故を起こしたときの補償について

自賠責保険、任意保険、いずれも居眠り運転で起こした事故については、その被害に対する補償は認められることがほとんどです。

ただし、運転手に重大な過失が認められる場合は、被害者などへの補償はされるものの、加害者への補償は下りないことがありますので、注意が必要です。

具体的には、病院で風邪薬を処方され、「その薬を服用した後は車を運転しないでください」と注意されていたにも関わらず、車を運転し居眠り運転で事故を起こした場合などは、保険会社によっては、加害者に「重大な過失」があったと認められてしまう可能性は否定できません。

居眠り運転で検挙、逮捕された後の対応

安全運転義務違反で捕まった場合は反則金を支払い、違反点数の2点を素直に認めることで、行政処分や刑事処分については事なきを得ることができるでしょう。

また、自損事故、物損事故などを伴っている場合は、ドライバーの治療費や車の修理代の支払いについて、保険会社に連絡を入れて補償内容の確認などを行いましょう。

一方、過労運転で逮捕された後の対策としては、罰金刑に対するお金の工面や免許取り消し後の移動手段の検討などが挙げられますが、「会社からの処分」も確認する必要があります。

近年は法令順守の機運の高まりから、会社が法令違反をした社員に対して厳しい処分を下すことが少なくありません。

就業規則や雇用契約の内容によっては、減給、降格、解雇などの可能性もありますので、内容を確認しましょう。

そして、就業規則や雇用契約の内容によっては会社と交渉することになりますが、解雇理由次第では、再就職などにも影響を与えることがありますので、交渉の仕方については必要に応じて専門家の意見を求めましょう。

法テラス弁護士ドットコムなどのサイトでは法律の無料相談を行っていたりしますので、そういったサイトを利用することも検討をおすすめします。

なお過労運転だけでなく、実刑を下される可能性がある場合は、以下のような対応も必要になってきます。

量刑軽減のためにできること
1法廷で「2度と同じような交通違反をしない」ことを誓う
2反省文を書く
3自動車を売却する
4家族や職場の上司から情状酌量のための証言を集める

量刑を減刑してもらうためには、本人が反省していることを示すことが何よりも重要になってきますので、必ず法律の専門家に相談しましょう。

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参考サイト/「ズバット車買取比較

参考サイト/「UcarPAC

著者:伊澤仁志

自動車業界の片隅で働くエンジニア。これまでハードウェアやソフトウェアの開発だけでなく、ネットや実店舗での営業販売、マーケティングなどの仕事に関わってきました。現在はシステム設計をおこなう傍ら、ウェブメディアを中心に執筆を行っています。