「最近、セルが空回りしてエンジンがかかりにくいときがある・・」
「セルモーターを回すたびにギギギといった異音がすごい・・」
「エンジンがかからない・・スイッチを入れても、セルモーターが動かないときがある・・」
今、自動車に乗っている方の中には、こんな風に「セルモーターの故障や異常」に直面されているという方もいるのではないでしょうか。
自動車業界の片隅で働く筆者も過去、中古輸入車を購入して1年ほどでセルモーターの故障というトラブルに見舞われ、戸惑ってしまった経験があります。
そこで今回はセルモーターの故障の原因とよく見られる症状のほか、対処方法や修理費用などについてまとめてみました。
※セルモーターは和製英語で、海外ではセルフ・スターターと呼ばれています。
早速、見ていきましょう。
セルモーターの異音や空回りなど故障の原因
まず、そもそもセルモーターが回りエンジンがかかるまで、ガソリン登録車がどんな仕組みになっているのかということを、先にざっくりと見てみましょう。
非常にざっくりとですが、車のキーを回したり、スイッチをONしてからエンジンがかかるるまでの仕組みは上記のような形になっていまして、充電装置であるバッテリーから供給された電力(ACC電源)でセルモーターがまわり、各種センサーが反応し、その後、点火装置へとつながり、エンジンがかかるという流れになります。
その他にも、ECU(電子制御装置)などが、燃料は入っているか、冷却水に問題はないか、エンジンに異常はないか、などを常にモニターして、車の始動を制御しているという状況です。
では、それらを踏まえた上で、セルモーターの異音や空回りなど故障の原因には、どのようなものがあるのかについて見ていきましょう。
症状 | 考えられる原因 |
---|---|
回らない・かからない | バッテリーの不具合や寿命 ヒューズ切れ セルモーター本体の寿命や故障 エンジンECU(電子制御回路)あるいは制御系パーツの異常 エンジン本体のトラブル 燃料ポンプの故障 各種センサーの不良 |
異音「キュルキュル」「ギギギ」 | ピニオンギアの摩耗・劣化 フライホールのリングギヤ摩耗・劣化 マグネットスイッチの摩耗・劣化 各種ベルトの摩耗・劣化 |
空回り・かかりにくい | バッテリーの不具合や寿命 セルモーター本体の寿命や故障 エンジンECU(電子制御回路)あるいは制御系パーツの異常 各種コイル・プラグのパーツや配線の不良 エンジン本体のトラブル |
ご覧いただきました通り、聞こえてくる音や不具合の内容によって推定される原因は多種多様になっておりまして、大きく分けますと、電気系統、点火系、燃料系などに分類されています。
なお、それぞれの原因が独立しているというわけではなく、それらが複合的に絡み合っているというケースもあったりします。
例えば、バッテリー上がりなどの充電トラブルは比較的よく見られますが、よくよく調べてみると、セルモーターそのものにも異常があるということは決して珍しくありません。
下記は実際のセルモーターの画像です。
なお、セルモーターはエンジンをかける度に摩耗・劣化が進むことから、走行距離10万~15万キロや新車登録から約10年前後で寿命を迎えるケースが多く見られます。
ただ、リビルド品やサードパーティー製のセルモーターの場合は、自動車との”相性”が悪かったりすると、もっと短期間で寿命を迎えることもあります。
また、ECU(電子制御システム)などの故障が原因の場合は、その仕組みが複雑化していることもあり、原因特定までに時間がかかったり、修理費用が高額になったりすることも少なくありません。
セルモーターの異常やトラブルが深刻化すると・・
セルモーターの異音やトラブルの修理については、ヒューズ交換やバッテリー交換をすれば済んでしまうものから、高額な費用がかかるエンジンの交換まで様々ですが、一つ言えることは、セルモーターから出る異音や異常を放置しておくと、後で深刻な故障に発展する可能性は否定できないということです。
例えば、数万円で済むバッテリー交換を怠り、セルモーターに異音やトラブルが発生しているにも関わらず運転を続け、最終的には高速でバッテリ上がりを起こしたり、最悪、エンジンが故障してしまうというケースも十分に考えられます・・・。
実際に、「エンジンがかからなくなる原因がバッテリーだった」というトラブルは最もよくあるケースで、例えば、JAFのロードサービス救援依頼内容では、ほぼ毎年、「バッテリー上がり」がトップという結果になっています。
※バッテリ上がりとは、バッテリーの充電がなくなること。(充電しなおすか、新しいバッテリーに交換するしかありません)
順位 (平成28年4月~平成29年3月) | 救援依頼内容 | 構成比 |
---|---|---|
1 | 過放電バッテリー | 32.13% |
2 | タイヤのパンク、バースト、エアー圧不足 | 16.27% |
3 | キー閉じ込み | 8.93% |
4 | 落輪・落込 | 7.76% |
5 | 破損/劣化バッテリー | 5.46% |
データ出所/JAF
また、そこまで深刻な事態にならない場合でも、どこかに故障を抱えたまま走行することは、車が本来持っている動力性能を引き出せず、燃費の悪化などにも繋がったりします。
セルモーターの修理代金や交換費用について
では続いては、セルモーターからの異音やトラブルの対処方法や修理・交換費用などについて見ていきたいと思います。
まず、「あれ?なんかおかしい」と感じたときは、例えば、異音が聞こえる状況やトラブルが起こった経緯などを確認し、メモなどに残しておきましょう。
後で、ディーラーや信頼できる整備工場で状況を正確に伝えるために必要になりますし、プロのスタッフであれば、どんな状況でどんな異音やトラブルが出るかが分かれば、ある程度まで、原因を特定できる可能性が高くなるからです。
なお、電子制御の異常についてはODB2などから検査できるシステムが必要になりますので、修理屋さんに持ち込む場合は、テスターがあるかどうかも修理先を選ぶ判断基準にした方がいいでしょう。
直観と経験だけを頼りにしている場合、原因特定に時間がかかるだけでなく、”たらいまわし”に遭うとともに修理費用も高額になりかねませんので注意が必要です。
では、セルモーターの修理代金や交換費用をケース別にご覧ください。
修理箇所 | 料金の目安 |
---|---|
オイル交換 | 1,000円~3,000円前後 |
各種配線の修理・交換 | 5,000円~ |
各種センサーの修理・交換 | 10,000円~ |
燃料ポンプ交換 | 10,000円~ |
バッテリー交換 | 15,000円~ |
セルモーター交換(ASSY) | 30,000円~ |
ECUやコンピューターの修理・交換 | 100,000円~ |
エンジン交換 | 400,000円~1,000,000円 |
工賃 | 別途 |
どれか一つで済む場合もありますし、また、上記の幾つかが重なる場合もありますので、修理代金や交換費用は、その原因によってかなり開きが出ることがあるというのをお分かり頂けるかと思います。
セルモーター本体に原因がある場合は、基本的にはセルモーターそのものを交換するケース(ASSY)がほとんどになります。
なお、エンジン、ECUの修理・交換に発展する場合は、リビルト部品や程度の良い中古部品などで交換をしたとしても、それでも修理費用はかなりの高額になることを覚悟しておく必要があります。
さらなるトラブルを招く前に・・・
中古車の資産価値に大きな影響を与えるクルマの「修復歴」
実は筆者は過去に、度重なる故障やトラブルが買取価格の大きな下落を招くことがあったことから、最近は修理をする前に資産価値を確認するようにしています。
特に筆者が自分の愛車の価値を"こっそり"と知るために重宝しているのが、匿名査定の「UcarPAC」という無料サービス。
独自の仕組みから予想外の高値がつくことも多く、これまで車の買い替えのときには、何度も助けてもらいました^^
高額の修理代を払って"修理する前に"試してみるだけの価値はあります。
参考サイト/「UcarPAC」
まとめ
「車のセルモーターの空回りや異音・・セルモーター故障の原因と症状・修理費用などのまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
自動車の始動にあたって最も重要なパーツの一つであるセルモーターに不具合が起きるというのは、走行距離や年数次第ではありますが、他の箇所にも不具合や故障が発生している可能性は決して低くはありません。
特に走行距離が長くなっていたり、発売からかなりの年数が経過している車の場合、「寿命」を迎えている可能性もありますので、修理費用にもよりますが、車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に検討したいところです。