自動車の中でも最も基本的な動きである「直進」
あまりにも基本的な動作のため、できて当たり前のように思ってしまいがちですが、実際には風や路面、先行車両や対向車との距離調整など目まぐるしく変化する状況に対応することが求められるだけでなく、ドライバーの運転のクセやパーツの経年劣化や故障なども影響してくるため、常に安定してまっすぐ進むということは容易なことではありません。
そこで、今回は自動車業界の片隅で働く筆者が「車がまっすぐ進まない・・・」といった状況を生み出す原因とその解決方法や修理費用などについて説明していきたいと思います。
早速、見ていきましょう。
車がまっすぐ進まない原因は?
車がまっすぐ進まないという原因は、レア・ケースも含めますと、究極的には無数にあると言えますが、ここでは、車が直進しないトラブルでよく見られるケースにはどんなものがあるのかということを見ていきたいと思います。
〇タイヤの空気圧低下や経年劣化などのタイヤ・トラブル
自動車がまっすぐ走るためには欠かせないパーツで、その劣化や損傷が直進安定性に大きな影響を与える「タイヤ」
近年のタイヤは一昔前のタイヤに比べますと、格段にその品質は向上していますが、四六時中、1トンから2トン近くもある自動車を支え続け、ストップ&ゴーが多い日本の交通環境の中、曲がったり止まったりを繰り返しますと、どうしても摩耗や空気圧低下などの劣化は避けられません。
また、経年劣化の他にも、タイヤトラブルには縁石などによる損傷といった可能性もあります。
直進時だけでなく、カーブを曲がったりするときに車の動きが不安定といった場合は、タイヤ・トラブルの可能性が真っ先に疑わしいと言えるでしょう。
〇アライメントやホイールバランスの調整不良
自動車がまっすぐ進まないという状況に加えて、ブルブルとハンドルの振動に違和感がある・・と感じる場合、前述のタイヤ・トラブルの他に、アライメントの調整不良やホイールがらみのトラブルもよく見られます。
※アライメントとは、車軸の角度を適正な状態に調整すること。
近年の自動車の多くは技術力向上のおかげで、日常的にアライメント調整などはほとんど必要ありませんが、車をぶつけたり、ぶつけられたり、車検時の作業員のボルトの閉め忘れなどのミスにより、アライメントやホイールバランスが崩れてしまうということは少なくありません。
特に気を付ける必要があるのは、交通事故などの後で、人間の目視などでは正確なアライメント調整は困難なため、専用のテスターなどでキャスター角、キャンバー角、トー角などを順番にチェックし、調整する必要があります。
〇自動車のボディのゆがみや変形
大衆車から高級車まで、近年の自動車のボディの構造として最も普及しているモノコック構造。
衝撃吸収力が高かったり、剛性面で優れていたり、乗り心地が快適であるというメリットがある一方で、「衝突」や「変形」には弱いという特徴があります。
そのため事故などにより車をぶつけたり、ぶつけられたりして、一旦ボディの構造そのものがゆがんだり、変形してしまうと、まっすぐ車が走らないということが常態化してしまう可能性があります。
ボディの歪みはタイヤ交換やホイール調整のように、簡単に修復できないため、かなり高額の修理費用を負担するか、買い替えるケースがほとんどになっています。
〇パワーステアリングの不具合
車の直進安定性を支えるパーツには重要なパーツがいくつかありますが、その中でも、車を”操作する”という意味では、非常に重要な役目を果たしているハンドル。
中でも、近年の自動車の多くに採用されているパワーステアリングの故障やトラブルは、自動車の直進安定性にとって、大きな影響を与えています。
下記は電動パワーステアリングのイメージ。
パワステのシステムには、大きく分けて油圧式パワーステアリングと電動パワーステアリングの2つがありますが、オイル・トラブルや電気系統のトラブルなどがそれぞれの不具合の主な原因で、いずれの場合も車の直進安定性を損なう可能性は十分にあります。
〇レーダーやカメラ、センサーの不具合
日本だけでなく世界の自動車メーカーが開発にしのぎを削っている自動車の「電子制御技術」
ブレーキとアクセルの踏み間違いを防止する「誤発進抑制機能」や後方車両や前方車両との接触回避をアシストする「衝突回避機能」など数多くの先進技術が開発されていますが、その中の一つに白線などを検知して自動車が道路上をまっすぐに走ることができる「レーン・キーピングアシスト」といった機能もあります。
それらを制御するソフトウェアに不具合が発生するというのは、可能性としては極めて低いですが、それらの先進技術を支える「目」の役割を果たすレーダーやカメラ、センサーなどのハードウェアが故障するということは珍しくありません。
そして、そうしたハードウェアにトラブルが発生すると、車の直進が不安定になるという可能性があります。
車がまっすぐ走らない・・が深刻化すると・・
ここまでは車が直進しない原因としてよく見られるケースについて説明してきましたが、ここからはトラブルが深刻化した場合について見ていきたいと思います。
車の基本動作である「直進」が不安定なのは車の安全上、重大なリスクをはらんでいることは容易に想像がつくと思いますが、そのリスクを実際に示唆するデータとして警察庁が発表した「平成27年における正面衝突等死亡事故」があります。
データ出所/平成27年における正面衝突等死亡事故 -警察庁-(PDF)
上記のハンドル操作不適の原因にはドライバーのミスによるものと考えられますが、これまで説明してきたような”前兆”に気づいていながら、その問題を解決しないと最悪の場合、こうした事態を招きかねないということは認識しておきたいところです。
車がまっすぐ進まない・・修理代金や交換費用について
では続いては、車がまっすぐ進まない・・と感じたときの対応策について見ていきたいと思います。
まず、「あれ?なんかおかしい」と感じたときは、例えば、振動が出た状況、道路の状況、コーナーでの旋回時の状況などを確認し、メモなどに残しておきましょう。(スマホのメモアプリなどに箇条書きでOKです)
後で、ディーラーや信頼できる整備工場で状況を正確に伝えるために必要になりますし、プロのスタッフであれば、どんな状況でまっすぐ進まなかったのかが分かれば、ある程度まで、原因を特定できる可能性が高くなるからです。
また、より正確な原因究明をしたいという方は、メーカー専用の検査機器がある修理工場であれば、OBD2などにより内部データによるエラーなどを検出できますので、メーカー専用の検査機器を持っている工場やディーラーへ依頼した方がいいでしょう。
では、続いてパーツ・トラブルの修理代金や交換費用をケース別にご覧ください。
症状 | 参考価格 |
---|---|
タイヤ交換・空気圧調整/1本あたり | 3,000円~ |
パワステオイル交換 | 3,500円~ |
サイドスリップ調整 | 3,500円~ |
サスペンション交換(国産車) | 25,000円~ |
ステアリングラックブーツ交換・トーイン調整/1本あたり | 8,000円~ |
ショックアブソーバー交換(リヤ・フロント)/1本あたり | 8,000円~ |
パワステギアボックス修理・交換 | 70,000円~ |
パワステポンプ交換 | 30,000円~ |
パワステコントローラ交換 | 70,000円~ |
ATミッション交換 | 200,000円~ |
エンジン交換 | 400,000円~ |
工賃(人件費) | 別途 |
どれか一つで済む場合もありますし、また、上記の幾つかが重なる場合もありますので、修理代金や交換費用は、その原因によってかなり開きが出ることがあるというのをお分かり頂けるかと思います。
また、一部の輸入車など車の種類や部品によっては、交換に必要な工具に特殊な工具を要求されたりなど、部品よりも技術料や工賃の方が高額になるケースが少なくありませんので、上記はあくまで参考値としてご覧頂ければと思います。
なお、エンジン、ミッションの交換に発展する場合は、リビルト部品や程度の良い中古部品などで交換をしたとしても、それでも修理費用はかなりの高額になることを覚悟しておく必要があります。
さらなるトラブルを招く前に・・・
中古車の資産価値に大きな影響を与えるクルマの「修復歴」
実は筆者は過去に、度重なる故障やトラブルが買取価格の大きな下落を招くことがあったことから、最近は修理をする前に資産価値を確認するようにしています。
特に筆者が自分の愛車の価値を"こっそり"と知るために重宝しているのが、匿名査定の「UcarPAC」という無料サービス。
独自の仕組みから予想外の高値がつくことも多く、これまで車の買い替えのときには、何度も助けてもらいました^^
高額の修理代を払って"修理する前に"試してみるだけの価値はあります。
参考サイト/「UcarPAC」
まとめ
「車がまっすぐ進まない・・フラフラして直進しない原因と修理費用などのまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
車の基本動作である「直進」にトラブルが発生するというのは、走行距離や年数次第ではありますが、不具合や故障が広範囲に渡って発生している可能性は決して低くはありません。
特に走行距離が長くなっていたり、発売からかなりの年数が経過している車の場合、「寿命」を迎えている可能性もありますので、修理費用にもよりますが、車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に検討したいところです。