「車を走行していると、急にハンドルから今まで味わったことのない振動が・・」
「赤信号などで停車する度に、ハンドルが揺れる・・」
車を運転しているときに、こんな風にハンドルからの振動を感じて、ゾクッとするような恐怖感を憶えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自動車業界の片隅に身を置く筆者も、はじめて運転中にハンドルが突然プルプル振動したときは、かなり焦った記憶があります・・。
そこで、今回は車のハンドルがプルプル・ガタガタと振動する理由にはどんなことが考えられるのか、そして、それを修理する方法や費用についても見ていきたいと思います。
早速、見ていきましょう。
車のハンドルからの揺れ・振動の原因
まず、最初に人間がハンドルを握り、そのハンドルから振動を感じるとき、車のどの部分の”情報”がハンドルに伝わっているのかということを、イメージで先にざっくりと見てみましょう。
人はハンドルを握った手を通じて、クルマが曲がる、止まる、進むといった動きをする度に様々な状況を感知していますが、ハンドルへの振動という意味では、最も振動として伝わりやすいのが、タイヤとホイールからの”情報”になります。
ご存知の通り、タイヤとホイールは四六時中、1トンから2トン近くの重量がある自動車を支えているわけですが、(仮に動かさなくても)経年劣化とともに空気圧はどんどん下がっていきます。
空気圧の低下をずっと放置しておくと・・・、最終的には”パンク”。
さすがにパンクという状況にまで発展すれば、誰でもタイヤに異常があるというのは分かりますが、しかし、実はパンクに至るまでには、例えば、その前兆として経年劣化などが原因によるタイヤやホイールの歪みが振動としてハンドルに伝わっているということがあったりします。
そう考えますと、タイヤやホイールに何か問題がある場合のハンドルへの振動は、パンクといった深刻な状況に至る前に、タイヤの摩耗や損傷、空気圧の低下、アライメント(車体構造の歪み)といった”エラー・メッセージ”を、ドライバーに伝えているという見方もできなくありません。
では、そんなタイヤやホイールのトラブルも含めて、ハンドルへの振動の原因には、どのようなものがあるのかについて、もう少し細かく見ていきましょう。
ハンドルの振動・揺れが出るまでの症状 | 考えられる原因 |
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突然、車のスピードに関係なく揺れ・振動が出るようになった。 | タイヤがパンクしている (亀裂あるいは損傷など) |
徐々にハンドルに振動が出るようになった | ○タイヤの空気圧の低下 ○タイヤの摩耗 |
特定のスピードのときだけ、ハンドルにブレが出る (例えば、120km/h以上など) | ○ホイールバランスに異常が発生している(主にフロントタイヤ) ○ホイールの歪み ○アライメント(タイヤの取り付け角度)に問題がある ○シャフトの歪み(ドライブシャフトやプロペラシャフト) ○エンジンマウントのヘタリや亀裂 |
車を停車、発進したときの振動 | ○ブッシュ(ゴム類部品)の損傷(エンジンマウント、ミッションマウンドなど) ○点火プラグの経年劣化 ○エンジンオイルの汚れ ○各種バルブの汚れ・劣化や損傷(ISCVやOCVなど) ○エンジンマウントのヘタリや亀裂 ○インジェクターの不良 ○バッテリーの寿命 ○エンジンの故障 ○シャフトの歪み(ドライブシャフトやプロペラシャフト) ○オイル漏れ(パワステオイル、ミッションオイルなど) |
断続的にハンドルにブレが出る場合(速度や回転数、状況などがバラバラ) | ○ホイールバランスに異常が発生している(主にフロントタイヤ) ○ホイールの歪み ○アライメント(タイヤの取り付け角度)に問題がある ○ショックアブソーバーの劣化 ○エンジンの故障 ○ハブベアリングの故障 ○タイヤの経年劣化(フラットスポットの発生など) ○サスペンションの歪み |
<参考>振動に加えてパワステが重い | ○パワステギアボックスの故障 ○パワステコントローラ(ECU)の故障 ○センサーの故障 ○モーターの故障 ○減速機の故障 など |
ご覧いただきました通り、ハンドルへの振動の内容によって推定される原因は多種多様になっておりまして、大きく分けますと、タイヤ、ホイール、エンジン、その他のパーツなどに分類されています。
なお、それぞれの原因が独立しているというわけではなく、それらが複合的な原因となっているというケースもあったりします。
例えば、ハンドルの振動の原因として「ホイールバランスの歪み」は比較的よく見られますが、実際にはそれに加えて、消耗品とも言えるブッシュ(ゴム系部品)の劣化・損傷やオイル漏れ(パワステオイルやエンジンオイル漏れ)などが併発しているということは決して珍しくありません。
なお、上記の表には記載しませんでしたが、輸入車の中には、ガソリンの種類によって、「シミー現象」(※)を引き起こすことも稀にあり、ハンドルの振動の問題解決は意外なところに原因があったりすることもあります。
※80km/h以下の比較的低速で共振現象を起こし、ハンドルが振れる現象。
また、ハンドルの振動だけでなく、「パワステが重い」といった症状が出ているときは、パワステコントローラ(ECU)の故障や減速機の故障、モーターの故障といった深刻な状況に陥っている可能性もありますので、すぐに専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。
ハンドルの振動が悪化すると・・
ハンドルの振動の修理については、ホイールバランスの調整やブッシュ交換をすれば済んでしまうものから、高額な費用がかかるECUの修理交換、エンジンの交換まで様々ですが、一つ言えることは、ハンドルからの振動を放置しておくと、後で深刻な故障に発展する可能性は否定できないということです。
例えば、ハンドルの振動でしばしば見られる「エンジンの点火系プラグ」の修理・交換を怠り、ハンドルからの振動が発生しているにも関わらず運転を続けていると、高速などでエンジンが突然、故障し爆音とともに車が動かなくなってしまうという可能性も考えられます・・・。
また、パワステの不具合にありがちなパワステオイルの不足がハンドルの振動を引き起こしているときなども、最悪の場合、バッテリー上がりが起こり、車が動かなくなってしまうということもあります。
なお、そこまで深刻な事態にならない場合でも、ハンドルへの振動を引き起こしている状態、つまりクルマのどこかに故障を抱えたまま走行することは、車が本来持っている動力性能を引き出せず、燃費の悪化などにも繋がったりしますので、そういった面でも解決は早め早めにした方がいいでしょう。
ハンドルの振動を修理する費用について
では続いては、ハンドルの振動の修理・交換費用などについて見ていきたいと思います。
まず、「あれ?なんか違和感がある」と感じたときは、ハンドルの振動が起きた状況などを確認し、メモなどに残しておきましょう。
後で、ディーラーや信頼できる整備工場で状況を正確に伝えるために必要になりますし、プロのスタッフであれば、どんな状況でハンドルへの振動が出るかが分かれば、ある程度まで、原因を特定できる可能性が高くなるからです。
では、ハンドルの修理代金や交換費用をケース別にご覧ください。
症状 | 参考価格 |
---|---|
オイル交換 | 1,000円~3,000円前後 |
タイヤ交換(1本あたり) | 2,500円~ |
ステアリング交換 | 3,500円~ |
サイドスリップ調整 | 3,500円~ |
サスペンション交換 | 20,000円~ |
ドライブシャフト・ブーツ交換 | 9000円~ |
タイロットエンドASSY交換 | 4,000円~ |
パワステギアボックス修理・交換 | 70,000円~ |
パワステポンプ交換 | 30,000円~ |
パワステコントローラ交換 | 70,000円~ |
工賃(人件費) | 別途 |
どれか一つで済む場合もありますし、また、上記の幾つかが重なる場合もありますので、修理代金や交換費用は、その原因によってかなり開きが出ることがあるというのをお分かり頂けるかと思います。
特にハンドルの振動でよく見られるホイールバランスの歪みの調整は、特殊な機器や工具が必要になることがあり、パーツ代よりも技術料を含む工賃が高額になるケースがあったりしますので、まずは信頼できる業者に見積もりを取ってみることをおすすめします。
なお、パワステやエンジンの交換に発展する場合は、リビルト部品や程度の良い中古部品などで交換をしたとしても、それでも修理費用はかなりの高額になることを覚悟しておく必要があります。
さらなるトラブルを招く前に・・・
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参考サイト/「UcarPAC」
まとめ
「車のハンドルがプルプル・ガタガタと振動?ハンドルが揺れる原因と修理代のまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
自動車の最も重要なパーツの一つであるハンドルに不具合が起きるというのは、走行距離や年数次第ではありますが、他の箇所にも不具合や故障が発生している可能性は決して低くはありません。
特に走行距離が長くなっていたり、発売からかなりの年数が経過している車の場合、「寿命」を迎えている可能性もありますので、修理費用にもよりますが、車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に検討したいところです。