もともとは自動車の冷却ファンを冷やす役割を果たしていた「ファンベルト」
しかし最近の車では、技術改良が進んだことから、オルタネーター用やパワステ用、ウォーターポンプ用のベルトなどで兼用されているベルトのことを一括りにして”通称”「ファンベルト」と呼んだりするケースが増えています。(そもそも冷却用のファンベルトがない車種もあります。)
また、自動車によっては、上記のような補器類を1本のベルトで駆動させているケースもあり、そうしたベルトには「サーペンタインベルト」という名称がありますが、昔の名残りと言葉の使いやすさなどから「ファンベルト」という言葉が使われていたりします。
今回はそんなファンベルトが切れたり、異音といったトラブルが発生する原因、そして修理・交換にかかる費用などについて見ていきたいと思います。
ファンベルトが切れたり、異音がする原因
画像出所/アマゾン・ジャパン
ファンベルトのトラブルの原因には、細かいものも含めれば様々な原因がありますが、最も典型的な原因は経年劣化や摩耗による「寿命」が挙げられます。
最近の車のパーツは耐久性が著しく向上しているとは言え、5万キロ、10万キロ、20万キロと走行距離が長くなるにつれて、どうしてもいろいろなところに「ガタ」がくるのは避けられません。
特にファンベルトはクルマが「走る、止まる、曲がる」といった動きをする度にすり減っていく消耗品ですので、ファンベルトが故障する最も主要な原因としてはパーツとしての「寿命」が最も代表的なパターンというのは、致し方ないところかと思います。
なお、それ以外の原因となりますと、事故などによる衝撃や過酷な走行条件での度重なる運転、ファンベルト交換時の整備不良(ベルトの締めすぎや緩み)などが挙げられます。
では、ファンベルトに不具合が出ると、どんな症状が出るのか見ていきましょう。
ファンベルトからの異音は交換の目安?
ファンベルトからの不具合のサインとして、最も分かりやすい「異音」
エンジン回りから変な音が出ている・・・と言いましても、必ずしもファンベルトが原因とは限りませんが、ファンベルトや関係するパーツにトラブルがあるときの異音は、重要なサインの一つです。
症状 | 考えられる原因 |
---|---|
異音「キーキー」「キュルキュル」 | ファンベルトのゆるみ、たわみ、摩耗など |
異音「カラカラ」「カタカタ」 | ファンベルト及びプーリーの摩耗など |
異音「ヒュンヒュン」「ヒュルヒュル」 | ベルトの摩耗・劣化 ミッションの不具合 |
異音「ウィーン」 | ベアリングの劣化 |
上の表は、実際にファンベルトから出る異音とその考えられる原因をまとめたものになります。
例えば、ミッションに不具合が出たりなど、内容によっては、症状が深刻なケースも”まれ”にありますが、ほとんどの場合、ファンベルトの交換などで、異音はなくなるでしょう。
また、ファンベルトは乾燥が長期間続くなどの気象条件によっても異音が出る場合もありまして、その場合は、交換や修理の必要がなく、湿度が上がったりするだけで解決するといったケースもあります。
いずれにしても、ファンベルトからの異音だけでその原因を特定するというのは簡単なことではありませんので、まずはディーラーや整備工場などで点検をしてみることをおすすめします。
なお、一番危険なのは、ファンベルトからの異音を放置して、悪化させることで、後ほど説明しますが、重大なトラブルの原因となりかねません。
ファンベルトの不具合が深刻化するとどうなる?
では、続いて、ファンベルトのトラブルが深刻化すると、どうなってしまうのかということについて見ていきましょう。
〇ウォーターポンプの故障
本記事の冒頭で、近年の自動車では”通称”ファンベルトが様々なパーツを機能させる役目を果たしていることを説明させて頂きましたが、その一つがウォーターポンプになります。
エンジンは車が動く、止まる、曲がるといった動作を行う度に、その熱の温度を調整する必要がありまして、そのエンジンの温度を調整するために水温センサーやラジエータ、ファンベルト、サーモスタット、ウォータポンプなどが連携をしながら「冷却水」を循環させています。
しかし、ファンベルトが切れたり、ひどく損傷していると、この循環が上手く機能せず、最悪の場合、エンジンがオーバーヒートして、車は停止してしまうということになりかねません。
さらに、エンジンを含め、エンジン回りの部品に深刻なダメージがもたらされると、高額の修理費用か廃車ということになったりします。
〇オルタネーターの故障
ファンベルトは、別名オルタネーターベルトとも呼ばれ、オルタネーターの稼働に欠かせないパーツとなっています。
そして、そんなオルタネーターベルトがひどく摩耗していたり、劣化してしまうと、車のエンジンがかかりにくくなったり、車のエンジンがかからなくなってしまうという症状が出てきます。
また、発電を担うオルタネーターの不具合は、バッテリ上がりやヘッドライトの点滅トラブルやカーオーディオの不具合といった症状を発生させることがあります。
なお、オルタネーターベルトが切れている場合であっても、数時間は走行可能だったりしますが、基本的には車は動かさずにJAFなどのサポートを呼んだ方が安全です。
〇パワーステアリングが重い
〇パワーステアリングポンプの停止
近年の自動車は、油圧式のパワーステアリングと電動パワーステアリングのいずれかを採用していることが多いですが、いずれの場合でもファンベルトが摩耗や劣化が深刻になると、ハンドルが重くなったり、低速での操作ができなくなったりといったことが起こります。
そして、パワステのオイル不足のまま走行を続けていくと、最悪の場合、バッテリーが上がってしまって一時的に車が動かなくなってしまうことも考えられます。
また、自動車メーカー各社でパワステ関連のリコールが多く見られるように、パワステのトラブルは場所が場所だけに、状況が深刻化すると悲惨な事態に発展する可能性がありますので、パワステの調子がおかしいと思ったときは、ただちに点検した方がいいでしょう。
〇エアコンが使えない
ファンベルトがエアコンベルトも兼ねている車の場合、ファンベルトの深刻な劣化や摩耗は、エアコンの性能にもダメージを与えます。
冷房、暖房が使えなくなってしまいます。
ファンベルトの修理代金や交換費用について
では、続いてはファンベルトの修理・交換に伴う費用について見ていきましょう。
ここまでの説明でご覧いただきました通り、ファンベルトの修理にあたって、ベルト交換だけで済むのか、あるいは、その他のパーツの修理・交換に及ぶのかで、その費用感は大きく異なってきます。
症状 | 参考価格 |
---|---|
ファンベルト交換 | 1,000円~ |
オルタネーター交換 | 45,000円~ |
ベアリング交換 | 1,500円~ |
パワステポンプ交換 | 30,000円~ |
パワステコントローラ交換 | 70,000円~ |
ウォーターポンプ交換費用 | 10,000円~ |
コンプレッサー交換 | 50,000円~ |
ATミッション交換 | 200,000円~ |
エンジン交換 | 400,000円~ |
工賃(人件費) | 別途 |
また、その他のパーツに修理・交換が及ぶ場合でも、どれか一つで済む場合もあれば、また、上記の幾つかが重なる場合もありますので、修理代金や交換費用は、その原因によってかなり開きが出ることがあるというのをお分かり頂けるかと思います。
なお、パワステやエンジン、ミッションの交換に発展する場合は、リビルト部品や程度の良い中古部品などで交換をしたとしても、それでも修理費用はかなりの高額になることを覚悟しておく必要があります。
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まとめ
「ファンベルトが切れたり、異音がすると危険?!トラブルの原因と修理・交換にかかる費用のまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
ファンベルトの交換は一般的には5万キロや10万キロなどの走行距離が交換の目安とも言われますが、運転の状況などによってはファンベルトだけでなく関連パーツもしっかりと点検や交換をした方がいいというのが、自動車業界の片隅で長く仕事に関わってきた筆者の持論です。
なぜなら、かつて筆者が乗っていた車で、ファンベルトに異音が発生して修理した後、一時的に異音はなくなったものの、しばらくするとまた異音が出て、再修理になったことがあり(ベアリングなどに不具合が隠れていた)、痛い出費となってしまったことがあったからです・・・。
筆者のケースのように、最初はファンベルトの劣化かなと思っても、走行距離や年数次第では、他の箇所にも不具合や故障が発生している可能性は決して低くはありません。
走行距離が長くなっていたり、発売からかなりの年数が経過している車の場合、クルマとしての「寿命」を迎えている可能性もありますので、修理費用にもよりますが、車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に検討したいところです。