「昨日まで普通に動いていたのに、今日エンジンをかけようと思ったら、うんともすんとも・・エンジンがかからない・・」
「久しぶりに車に乗ろうとしたら、電気はつくのに、エンジンが無反応・・・」
「バッテリーを交換したばっかりなのに・・、バッテリー以外にエンジンがかからない理由って・・?!」
自動車を運転しようとして、こんな状況に陥ったという方もいるのではないでしょうか。
筆者もかつて、長めの海外出張から帰ってきて久々に愛車に乗り込み、「いざ・・」というときに突然、エンジンがかからなくなったことがあり、車庫でひとり”焦った”記憶があります。
そこで今回は、自動車業界の片隅で働く筆者が「エンジンがかからない原因」や対処法、そして修理費用などについてまとめてみたいと思います。
早速、見ていきましょう。
エンジンがかからない理由の多くはバッテリーが原因?
キーを挿し、アクセルを踏んでから車が動き出すまでに、自動車の内部では様々なパーツや燃料がそれぞれの役割を果たしていますが、中でも重要な役割を果たしているのが、電子機器とエンジンです。
下記はガソリン登録車のエンジンがかかるまでのイメージです。
そして、電子機器やエンジンを稼働させるために必要な「電気」を供給するという大切な役目を果たしているのが、「バッテリー」になります。
写真出所/古河電池
車のバッテリーがなぜそんなに重要かといいますと、例えば、携帯電話で電話を掛けたり、アプリを使ったりするときに、充電=バッテリーが欠かせないように、カーナビを作動させたり、室内灯のライトをつけたり、エンジンをかけたりするために欠かせない存在だからに他なりません。
さらに、携帯電話のバッテリーにも寿命や故障があるのと同様に、自動車のバッテリーにも寿命や故障がありまして、特に、自動車のエンジンをかけるというのは、車種によりますが、大きな電気量を必要とするため、バッテリーが寿命を迎えていたり、充電が少ないと、車のエンジンがかからないという状況に陥ってしまいます。
実際に、「エンジンがかからない原因がバッテリーだった」というトラブルは最もよくあるケースで、例えば、JAFのロードサービス救援依頼内容では、ほぼ毎年、「バッテリー上がり」がトップという結果になっています。
※バッテリ上がりとは、バッテリーの充電がなくなること。(充電しなおすか、新しいバッテリーに交換するしかありません)
順位 (平成28年4月~平成29年3月) | 救援依頼内容 | 構成比 |
---|---|---|
1 | 過放電バッテリー | 32.13% |
2 | タイヤのパンク、バースト、エアー圧不足 | 16.27% |
3 | キー閉じ込み | 8.93% |
4 | 落輪・落込 | 7.76% |
5 | 破損/劣化バッテリー | 5.46% |
データ出所/JAF
実に全体のトラブル件数の30%以上も占めていまして、5位のバッテリの劣化・破損も含めますと、約40%前後もバッテリーが原因で救援依頼があったことになりまして、いかにバッテリーに関するトラブルが多いかがお分かり頂けるかと思います。
では、なぜそんなにバッテリーのトラブルが起きるのでしょうか?
バッテリーの寿命とトラブル
エンジンがかからない原因として最も典型的な症状である「バッテリーのトラブル」ですが、そのバッテリー・トラブルを引き起こす原因について見ていきましょう。
〇バッテリーの寿命
ガソリン登録車であれば、走り方次第ではありますが、2~5年前後で一度、交換のタイミングがやってきます。
悪路を走行することが多かったり、運転が荒かったり、バッテリーの品質があまりよくないと、「2年」で交換なんていうことも”ザラ”にあります。(携帯電話のバッテリー並みですよね・・。)
なお「電気自動車やハイブリッドカーは日々、電力を充電するから大丈夫では?」という意見もありますが、決してそうとも言い切れない面もありまして、ガソリン登録車同様、普段の走り方や「過充電(※)」なども寿命に影響をおよぼすという側面もあります。
※充電をしすぎる=過充電は、バッテリーの寿命を縮める要因の一つに挙げられます。
ただ、中にはパナソニックのように、オルタネーター(発電機)とバッテリーの間に充電量を制御するソフトウェアを挟みこむことで過充電を防ぎ、バッテリーの寿命を延ばすことに成功していたりする製品もあります。
画像出所/パナソニック・カーバッテリー
バッテリーが寿命を迎えると、充電を行っても運転するのに十分な蓄電ができなくなってしまい、バッテリー交換せざるを得ないという状況になります。
〇バッテリー上がり
バッテリーの寿命とは別に、バッテリーが一時的に充電不足の状態に陥ってしまっている状態が「バッテリー上がり」になります。
具体的には、バッテリー上がりを起こす要因として下記のような車の使い方が挙げられます。
バッテリー上がりを起こす車の使い方 |
---|
普段から渋滞での走行が多い |
普段あまり車を使用しない |
1度に走行する距離が少ない |
夜間の走行がほとんど |
雨の日や雪の日しか車を使用しない |
後付けのオーディオ機器など消費電力の大きな電装品を使用している |
エアコンの使い方が極端 |
急ブレーキや急なアクセルの踏み込みが多い |
後付けしたバッテリーの容量が小さい |
一時的に電力が不足している状態ですので、充電をすればバッテリーとしては機能を果たすことができます。
ただ、一度バッテリー上がりをしてしまうと、バッテリー上がりを再発しやすくなるケースが少なくないことから、バッテリー上がりが起こったタイミングで新品に交換するという方も多くいます。
〇バッテリーやバッテリー関連パーツの故障・不具合
ケースとしては稀ですが、事故などでバッテリーやバッテリーターミナルなどに故障が発生して、充電ができなくなったりというケースや、不良品というパターンもあります。
こちらの場合も充電ができないようであれば、新品のバッテリーに交換せざるを得ません。
バッテリーの故障は、自動車本来の性能を引き出せないだけでなく、燃費の悪化やほかのパーツへの被害拡大の原因にもなりかねません。
バッテリー以外でエンジンがかからない原因とは?
ここまではバッテリーのトラブルでエンジンがかからないというケースを詳しく見てきましたが、バッテリー以外でエンジンがかからないというケースにはどんなものがあるのかということを、ここから見ていきたいと思います。
〇オルタネーターの故障
バッテリーと並んで、現代の自動車の電力供給源として非常に重要な役割を果たしているオルタネーター。
冒頭で、「バッテリーを交換したばかりなのに、エンジンがかからなくなってしまった・・」というケースに触れましたが、バッテリー以外でエンジンがかからない原因としては、このオルタネーターの故障がよくあるケースの一つです。
特に、エンジンがかからなくなる前に、下記のような異音やエンジンがかかりにくいといった症状がみられた場合は、その可能性はかなり高くなります。
症状 | 考えられる原因 |
---|---|
エンジンがかかりにくい | カ-ボンブラシの磨耗による寿命 |
異音「ウィーン」 | ベアリングの劣化 |
異音「キーキー」「キュルキュル」 | ベルトのゆるみ、故障 |
異常「カラカラ」「カリカリ」 | プーリーの摩耗 |
エンジンがかかりにくい | レクティファイヤ-の故障 |
エンジンがかかりにくい | ICレギュレ-タ-の故障 |
バッテリーを交換したばかりなのに・・という場合はオルタネーターが劣化、あるいは故障していることが考えられます。
〇セルモーターの故障
バッテリー以外でエンジンがかからない原因として、エンジンの起動装置の役割を果たしている「セルモーター」があります。
セルモーターはエンジンをかける度に摩耗・劣化が進むことから、走行距離10万~15万キロや新車登録から約10年前後で寿命を迎えることが多く、パーツとしての”ガタ”がきてしまいますと、エンジンをかけることができなくなってしまいます。
特にエンジンがかからなくなる前に、エンジンがかかりにくかったり、起動時に「ギギギ」「キュルキュル」といった異音が発生している場合は、寿命を迎えている可能性が高くなります。
〇それ以外に考えられる原因
ここまでバッテリ、オルタネーター、セルモーターとエンジンがかかりにくい代表的な原因を見てきましたが、その他にもエンジンがかかりにくい原因には、細かいものを含めますと、数多くあります。
以下に筆者がこれまで遭遇したケースや見聞きした症状を表にまとめましたので、ご覧ください。
エンジンがかかりにくい原因として考えられる症状 | 補足 |
---|---|
オーバーヒート | 冷却水漏れや燃料ポンプの故障など |
燃料ポンプの故障・不具合 | 燃料がうまく補給されていないなど |
エンジンの点火系パーツの故障 | スパークプラグコードの不具合など |
エンジンの混合系パーツの故障 | スロットルボディの不具合など |
エンジンの故障 | エンジン本体が故障している |
各種配線の接触不良 | イグニッションコイルの焼損(断線)など |
センサーの不良 | エアフロメーターやノックセンサーなどが故障など |
イモビライザーの不具合 | 盗難防止装置のエラーなど |
ハンドルロックがかかってしまっている | ハンドルロックの解除が必要 |
リモートキーの電池切れ | 電池交換が必要 |
上記以外にもレアケースなども含めますと、究極的にはエンジンがかかりにくい原因は無数にあると言えます。
エンジンがかからない・・解決の方法や対策は?
では、続いては車のエンジンがかからなくなってしまったときの対応策について見ていきたいと思います。
(※上記のように他の車から電力を供給してもらい、エンジンを起動する通称”ジャンプ”は、車種によっては仕様上できなくなっているケースがありますので、取り上げていません)
最もよくあるトラブルの「バッテリー交換」や「バッテリー充電」をする場合に、どんな解決方法があるのかということを表にまとめましたので、下記にてご覧ください。
対応策 | 注意点 |
---|---|
JAFのロードサービス | 会員は実費のみ。非会員はサービスも有料。(エリアによっては現金払いのみ) |
自動車保険(任意)のロードサービス | 加入していれば実費のみ。ただし、翌年度以降の保険料に影響ある可能性。 |
近くのガソリンスタンドへ修理依頼 | 内容によっては依頼可能。料金や支払い方法はガソリンスタンドによって異なる。 (バッテリー交換や充電であれば、十分対応可能) |
整備工場などへの引き取り依頼 | エリア次第。料金や支払い方法は対応業者によって異なる。 |
バッテリー以外に原因がある場合は、下記の限りではありませんので、ご注意ください。
〇JAFのロードサービス
ロードサービス大手の「JAF」に加入していれば、一般道路でも高速道路でも実費のみで対応が可能です。
ただ、加入していない場合は、作業料金や基本料金などが有料になってしまいまして、非会員の場合は、場所にもよりますが、一般道路で1万円~3万円、高速道路で2~5万円程度の料金は必要になります。
しかも、エリアによっては「後払い不可」の地域もありますので、手持ちのお金が少ないときは手配をお願いする前に確認をした方がいいでしょう。
〇自動車保険(任意)のロードサービス
加入している自動車保険(任意保険)にロードサービスが付帯している場合は、それを利用することで、バッテリー以外の費用をかけることなく、問題を解決することができます。
ただし、保険会社によっては翌年度以降の保険料に影響が出ることがありますので、その点は注意が必要になるでしょう。
〇近くのガソリンスタンドへの依頼
一般道路などでバッテリー上がりなどになってしまった場合は、ガソリンスタンドに依頼して、充電やバッテリー交換の依頼をすることも可能です。
ただ、ガソリンスタンドにより、配送費用や作業費、支払い方法などに差がありますので、依頼する前にその費用を見積もりしてもらうなど、確認した方がいいでしょう。
〇整備工場などへの引き取り依頼
やや裏技的になりますが、バッテリ上がりになった自動車の車検満了日が迫っていたり、定期点検のタイミングであれば、整備工場へ車両の引き取りの依頼をお願いして、その”ついで”に充電やバッテリを交換するという手もあります。
方法としては、カーセンサーなどで近くの車検屋さんの中から、「引き取り」可能な車検業者を検索して、引き取りに来てくれる業者を探すという流れになります。
参考/カーセンサー
また、カーセンサーでは、クレジットカード決済が可能な業者も探すことができますので、手持ちの現金に不安がある場合にも重宝します。
なお、車検は車検証があれば、自動車税などを滞納していなければ、他府県でも受けることができますので、遠出でバッテリ上がりになった場合の対策としても有効です。
ちなみに車検の有効期間の満了日を確認するには、下記の画像の赤枠で囲んだところを確認しましょう。
車検は、新車登録を行った年から3年、それ以降は2年ごとに有効期間の満了日を迎え、更新は満了日の1ヶ月前から受けることができまして、また、満了日が1ヶ月以上前であっても、次の車検満了日が早くなるだけで車検そのものは受けることが可能です。
エンジンがかからない・・修理にかかる費用について
では、続いてはエンジンがかからないときの修理・交換に伴う費用について見ていきましょう。
ここまでの説明でご覧いただきました通り、エンジン起動の修理にあたって、バッテリーの充電や交換だけで済むのか、あるいは、その他のパーツの修理・交換に及ぶのかで、その費用感は大きく異なってきます。
修理箇所 | 料金の目安 |
---|---|
バッテリー交換 | 10,000円~30,000円前後 |
イモビライザーの修理・交換 | 10,000円~ |
各種配線の修理・交換 | 5,000円~ |
各種センサーの修理・交換 | 10,000円~ |
オルタネーター交換 | 45,000円~ |
セルモーター交換 | 30,000円~ |
各種コードの修理・交換 | 5,000円~ |
燃料ポンプ交換 | 10,000円~ |
エンジン交換 | 400,000円~1,000,000円 |
ECUやコンピューターの修理・交換 | 100,000円~ |
工賃(人件費) | 別途 |
どれか一つで済む場合もありますし、また、上記の幾つかが重なる場合もありますので、修理代金や交換費用は、その原因によってかなり開きが出ることがあるというのをお分かり頂けるかと思います。
なお、エンジン、ECUやコンピューターの修理・交換に発展する場合は、リビルト部品や程度の良い中古部品などで交換をしたとしても、それでも修理費用はかなりの高額になることを覚悟しておく必要があります。
さらなるトラブルを招く前に・・・
中古車の資産価値に大きな影響を与えるクルマの「修復歴」
実は筆者は過去に、度重なる故障やトラブルが買取価格の大きな下落を招くことがあったことから、最近は修理をする前に資産価値を確認するようにしています。
特に筆者が自分の愛車の価値を"こっそり"と知るために重宝しているのが、匿名査定の「UcarPAC」という無料サービス。
独自の仕組みから予想外の高値がつくことも多く、これまで車の買い替えのときには、何度も助けてもらいました^^
高額の修理代を払って"修理する前に"試してみるだけの価値はあります。
参考サイト/「UcarPAC」
まとめ
「え!エンジンがかからない・・?!車が動かなくなる原因と対処法、修理費用などのまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
自動車を動かす起点となる「エンジンの起動」の不具合は、状況によっては緊急性を伴うことから、対処法などについては、かなり詳しく説明させていただきました。
また、ご覧いただきました通り、エンジンがかからない原因の多くはバッテリー・トラブルですが、走行距離が長くなっていたり、発売からかなりの年数が経過している車の場合、広範囲に渡って「寿命」を迎えている可能性もありますので、修理費用にもよりますが、車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に検討したいところです。