国土交通省が定期的に発表している車両の事故・火災情報でも度々、トラブルの原因として第一位になることがある「原動機(エンジン)」
そして、そんな原動機の火災の主な原因として国土交通省も注意を呼び掛けているのが、点検未整備によるエンジンオイルの劣化です。
下記は、平成27年に起きた自動車の走行距離と火災情報の割合をグラフ化したものですが、走行距離が長くなればなるほど、その原因として「原動機」の割合が高くなっていることがお分かり頂けるかと思います。(その典型的な原因としてエンジンオイルの劣化があると考えられています)
そこで、今回は最悪の場合、車両火災などの大事故にも発展しかねないエンジンオイルの劣化やエンジオイル漏れの原因と修理・交換の費用などについて見ていきたいと思います。
エンジンオイルの漏れで白煙や異音が出る原因
まず、そもそも、クルマの心臓にあたるエンジンにとって、エンジンオイルがどんな役割をしているのか、その仕組みについて、ざっくりと見てみましょう。
非常にざっくりとですが、エンジンオイルは上記イメージのような働きをしていまして、ガソリン・エンジンやディーゼル・エンジンに欠かせないピストンやクランクシャフトの摩耗や焼き付きを防ぐために潤滑油として機能したり、また、高熱を帯びやすいエンジンを冷却したり、あるいは、エンジンオイルの劣化の原因になる汚れや錆が溜まるのを防いだりしています。
そして、エンジンオイルにはガソリン用やディーゼル用、その両方を兼ねたユニバーサルオイルといった複数の種類がある他、粘度や製法などにより区分された規格があったりと、一口に言っても、その中身は様々なものがあります。
なお、種類や規格は様々ですが、その役割そのものには大きな違いはありません。
では、それらを踏まえた上で、エンジンオイルの漏れで白煙や異音が出る原因には、どのようなものがあるのかについて見ていきましょう。
エンジンオイルの漏れで見られる症状 | 考えられる原因 |
---|---|
停車後に地面や内部でオイル漏れ | <摩耗や劣化がよく見られる箇所> 〇クランクシャフトオイルシール 〇カムシャフトオイルシール 〇タペットカバーパッキン 〇オイルフィルター 〇ヘッドガスケット 〇オイルプレッシャースイッチ(センサー) 〇オイルクーラーホース など |
停車中に白煙及び焦げ臭い異臭 | オイル下がり |
加速中に白煙及び焦げ臭い異臭 | オイル上がり |
停車中と加速中の両方で白煙及び焦げ臭い異臭 | オイル下がりとオイル上がりの両方 |
異音「キーキー」 | オイル不足 |
異音「ガガガ」 | オイル不足 エンジン内部の不良 ミッションの不具合 カムシャフトやクランクシャフトのトラブル |
異常および振動「ガタン」「ガタンガタン」 | カムシャフトやクランクシャフトのトラブル ミッションの不具合 エンジンECU(電子制御回路)あるいは制御系パーツの異常 |
エンジンオイル漏れがまだ”軽症”の段階で最もよく見られるのは、クランクシャフトオイルシールやカムシャフトオイルシール、タペットカバーパッキンの劣化により、エンジンオイルが漏れ出すといったトラブルで、この場合はオイル交換とシール交換などの簡単な修理で済む場合がほとんどです。
また、オイルフィルターに不純物や汚れが溜まっていて、それが原因でオイルが漏れ出している場合も、フィルター交換をすることで、比較的、簡単にオイル漏れを止めることができます。
一方で、ヘッドガスケットやオイルプレッシャースイッチ、クランクシャフト、カムシャフトなどに損傷や異常が見られ、オイル漏れとともに、異音が出ている場合は、かなり注意が必要です。
この場合、損傷や異常の状況によりますが、そのまま放置して運転を続けると、最悪の場合、エンジンがオーバーヒートする可能性も十分に考えられますので、すぐにディーラーや整備工場などで原因の究明と対応策を講じる必要があります。
〇オイル上がり
自動車はメンテナンス不足を原因として様々な劣化が進みますが、中でも、ピストンリングがヘタってきたり、シリンダーが摩耗することにより、燃焼室にオイルが残ってしまう「オイル上がり」は重症の一つになります。
クルマを加速させる度に、焦げたような臭いとともにマフラーから白煙が上がるようになってしまいますと、対策としては、エンジンをオーバーホールするなど対策の選択肢が限られてきます。
また、症状によってはシリンダーのボーリングやピストン交換が必要になったり、 最悪、シリンダーブロックの交換なんてことも十分に有り得ます。
こまめにエンジンオイルを交換したり、クルマを大事に運転していれば、走行距離が長くなっても、この症状は基本的に起きないのですが、オイル交換を怠っていたり、品質の低いオイルを使ったりしていると、「オイル上がり」が起こります。
〇オイル下がり
主にメンテナンス不足が原因で起こるオイル上がりに対して、走行距離が長くなるにつれて、シリンダーとピストン(リング)が磨耗してクリアランスが広くなって隙間からオイルが抜け、オイル交じりの混合気が排気バルブから排出されるといった形で、白煙を上げるのが「オイル下がり」になります。
クルマは走行距離が長くなればなるほど、シリンダーとピストンは磨耗していきますので、オイル下がりの原因のほとんどは「経年劣化」ということになるかと思います。
ただ、経年劣化とは言え、エンジンオイルをこまめに交換したり、質の低いエンジンオイルを避けたりすることで、オイル下がりの予防は十分に可能です。
エンジンオイルの漏れを放置し、悪化すると・・
エンジンオイルの漏れの修理については、オイルシールやパッキン、フィルターを交換すれば済んでしまうものから、高額な費用がかかるパーツの交換、エンジンの交換まで様々ですが、一つ言えることは、エンジンオイル漏れを放置しておくと、のちのち重大な故障に発展する可能性は否定できないということです。
例えば、わずか数千円で済むエンジンオイル交換とシール交換を怠り(工賃は別途)、エンジンオイル漏れが発生しているにも関わらず、運転を続け、最終的に高速でグッと加速したときに、エンジンが故障し、白煙とともに車が動かなくなってしまうというケースもあったりします・・・。
また、国土交通省が注意を喚起しているように、エンジンオイルの劣化を発端に、エンジン周辺のパーツが摩耗・損傷して、車両の火災などに繋がる可能性も決して否定できません。
その他にも、故障が故障を呼ぶ形で、エンジンのトラブルがATミッションの故障やトラブルに派生してしまうと、アクセルを踏んでも、スピードが出なくなってしまったりして、状況によっては、事故を引き起こす原因にもなりかねません。
エンジンオイル漏れを放置しておくと、車検が通らない?
では、続いてはエンジンオイル漏れと車検について見ていきたいと思います。
まず、エンジンオイル漏れがあるからと言って、車検が通らないということはありません。(むしろ、少々の漏れやにじむ程度であれば、問題視されないことがほとんどです。)
では、どういったケースで車検が通らないかということを国土交通省が出している道路運送車両の保安基準から確認してみましょう。
道路運送車両の自動車点検基準 | |
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第一条 別表第一 | (*1)1 冷却水の量が適当であること。 (*1)2 ファン・ベルトの張り具合が適当であり、かつ、ファン・ベルトに損傷がないこと。 (*1)3 エンジン・オイルの量が適当であること。 (*1)4 原動機のかかり具合が不良でなく、かつ、異音がないこと。 (*1)5 低速及び加速の状態が適当であること。 |
第一条 別表第六 | 潤滑装置の油漏れ |
第一条 別表第八 (劣化又は摩耗により生ずる状態) | 1 排気の状態の不良 2 潤滑装置の油漏れ 3 燃料装置の燃料漏れ 4 冷却装置のファン・ベルトの緩み又は損傷 5 冷却装置の水漏れ |
エンジンオイル漏れに関連する保安基準は上記の通りとなっていまして、オイル漏れの他、エンジンのかかり具合、異音などがその点検対象となっていることが分かります。
また損傷や劣化なども基準として明記されていまして、エンジンオイル漏れを引き起こしている原因として、著しい損傷や劣化などがあるケースは、重大なリスクがあると判断されているとも言えます。
エンジンオイル漏れの修理代金や交換費用について
エンジンオイル漏れによる不具合の修理、交換については、その故障の内容により、かなりバラツキがあるというのが現状です。
エンジンオイル漏れの修理に、具体的にどれくらいの修理代金やパーツの交換費用がかかるのかということを表にまとめましたので、下記にてご覧ください。
修理箇所 | 料金の目安 |
---|---|
オイル交換 | 1,000円~3,000円前後 |
タペット調整費 | 5,000円~10,000円 |
クランクシャフトオイルシール交換 | 数百円~ |
カムシャフトオイルシール交換 | 数百円~ |
オイルフィルター交換 | 1,000円~2,000円前後 |
ヘッドガスケット交換 | 3,000円~ |
オイルプレッシャースイッチ(センサー)交換 | 3,000円~ |
オイルクーラーホース交換 | 2,000円~ |
ドライブシャフト・ブーツ交換 | 9000円~ |
ATミッション交換 | 200,000円~800,000円 |
エンジン交換 | 400,000円~1,000,000円 |
特殊工具代(技術料/工賃) | 20,000円~ |
車種によっても費用差があるほか、修理を依頼する先がディーラーなのか、整備工場なのかといった違いによっても費用感は異なってきますが、状況が深刻であればあるほど、修理・交換にかかるコストは重くなってくるのは間違いありません。
また、注意すべき点として、エンジオイルのパーツ交換は部品代が比較的、安いものの、特殊工具や特殊な部品が必要になる場合は、技術料という名の”工賃”が高額になることが多いという点が挙げられます。
実際に、オイルシールは部品代としては数百円程度ですが、工賃は1万円以上かかるということは、決して珍しいことではありません。
さらなるトラブルを招く前に・・・
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参考サイト/「UcarPAC」
まとめ
「エンジンオイルの漏れで白煙や異音?!トラブルの原因と修理・交換にかかる費用のまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
エンジンオイル漏れによる不具合は車のトラブルの中でも、経年劣化によるオイル下がりなどに見られるように、割とよくあるトラブルの一つです。
早め早めの対応が大事になってくるのはもちろんですが、最も注意しなくてはいけないのは問題を放置しておくと、別の箇所にも不具合や故障が波及してしまう可能性が決して低くないことです・・。
特に走行距離が長くなっていたり、車の運転の仕方や運転していた環境などによっては、クルマそのものが「寿命」を迎えている可能性もありますので、修理・交換の見積もり費用にもよりますが、車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に検討したいところです。