乗り降りのしやすさや開け閉めの快適性が追求され、キーレスエントリー(リモコン式のカギ)やパワースライドドアなどが広く普及してきている自動車の「ドア」
今回は、そんな自動車には欠かせない重要なパーツである「ドア」に起こるトラブルの中でも最もドライバー泣かせの症状の一つである”ドアが開かない”ときの原因や修理の方法、修理代などについて見ていきたいと思います。
早速、ドアの種類別に見ていきましょう。
一般的な車(ヒンジ型)のドアが開かない原因とは?
まず、最初に説明させて頂くのは、最も古くからあるカギを挿して、手前に引いて開くタイプ(セダンやクーペ、SUVなどで多く採用されている)になります。
最近では、キーを挿さずにテレビのリモコンのように、ドアの近くでボタンを押して鍵の開け閉めを操作できるタイプ(スマートキー)のキーレスエントリーシステムを実装した車を使用しているという方も多いかと思います。
では、一般的なドアが開かない・・・といった状況のときに、どんな原因と対応策が考えられるかをまとめてみましたので、ご覧ください。
考えられる原因 | 対応策 |
---|---|
スマートキーの電池切れ | 電池交換 |
バッテリーが上がっている | バッテリー交換あるいは予備キーで開ける |
予備キーの使い方を間違っている | 予備キーの回し方を色々と試してみる |
オルタネーターなどの不具合 | 発電機の修理・交換 |
ECU(電子制御回路)の不具合 | ECUの不具合を解決 |
イモビライザー(盗難防止装置)の故障 | イモビライザーの修理 |
チャイルド・ドア・ロックがONになっている (後方座席や助手席が内側からのみ開かないとき) | チャイルド・ドア・ロックを解除する |
凍結 | ドアの凍結を解凍 |
ドアストッパーの故障 | ストリングスやバケットなどパーツの交換・修理 |
キャッチの故障 | ドアを留めるパーツの交換・修理 |
ストライカーの故障 | キャッチと対応しているドア側のパーツの交換・修理 |
インサイドハンドルの故障 | ロッドやシリンダーなどの交換・修理 |
ドアロック・アクチュエーターの不具合 | アクチュエーターの交換・修理 |
〇スマートキーの電池切れ
キーレスエントリーシステムでよく見られるケースで、テレビのリモコンの電池が切れるように、スマートキーの電池が切れて、ドアの開閉ができなくなるというパターンになります。
定期点検などで電池交換するのを忘れていたりすると、起こってしまいます。
電池の寿命は使い方にもよりますが、2年~3年が目途になるでしょう。
〇バッテリーが上がっている
キーレスエントリーシステムでは、バッテリーが上がってしまうと、電気によって制御されている車両全体のロックの施錠と開錠ができなくなってしまいます。
この場合は、バッテリーを交換することでドアの開閉が可能になりますが、バッテリー上がりの状態でも、アナログキーである予備キーを使用することでドアを開けることは可能です。
〇予備キーの使い方を間違っている
リモコンキーの不具合が起こり、予備キーを使ってドアの開閉をしようとすると普段使い慣れてないことが原因で、ドアが開かないということがあります。
そんなときは、予備キーの使い方が間違っている可能性がありますので、左や右など色々な回し方を試してみましょう。
〇オルタネーターなどの不具合
バッテリー上がりで電気系統が上手く作動してくれず、ドアが開かないというケースの他に、発電機の役割を担うオルタネーターが故障しているというケースもあります。
特に走行距離が長くなっていて、車を運転しているときに異音が頻繁に出ていたり、エンジンがかかりにくいといった症状が出ていたときは、オルタネーターが故障していて、発電性能が機能していないという可能性は十分に考えられます。
〇ECUの不具合
ご存知の通り、近年の自動車はハイテク化が進み、様々な機能が搭載されることにより、高度に電子制御されています。
そして、自動車の電子制御を担うECU(電子制御回路)に異常が発生した場合は、リモコン操作でドアの開閉が可能なスマートキーを使うことができなくなってしまいます。
〇イモビライザー(盗難防止装置)の故障
日本車ではそれほど多く見られませんが、欧州車では一般的に装備されているイモビライザー(盗難防止装置)
イモビライザーも電子制御されているシステムであることから、何らかの故障が発生した場合は、ドアが開かなくなったり、エンジンをかけることができなくなってしまいます。
〇チャイルド・ドア・ロックがONになっている
子供を車に乗せたときのために用意されているチャイルド・ドア・ロック。
内側から子供がドアを勝手に開けないようにするための機能ですが、子供を乗せることがない人には、意外と知られていない機能かもしれません。
後方座席や助手席が内側からのみ開かない場合は、何らかの操作ミスでこのチャイルド・ドア・ロックが掛かってしまっていることがあります。
〇凍結している
極寒の地ではよく見られるケースで、ドアが凍結してしまって開かないというケースがあります。
無理やりこじ開けようとすると、ドアが壊れてしまいますので、ぬるめのお湯を使うなどの対処が必要になります。
〇パーツの不具合
ドアストッパーやキャッチ、ストライカー、インサイドハンドル、ドアロック・アクチュエーターなどのドアの周辺に配置されているパーツが摩耗や損傷などにより不具合を発生させている場合があります。
例えば、長年の走行によりストッパー内のバネが壊れてしまったり、他の車にドア側をぶつけられてしまったことが原因でキャッチとストライカーという”対”になっているパーツが上手くマッチしなくなったりといったことがあります。
パワースライドドアが開かない原因とは?
写真出所/ホンダ オデッセイ
では、続いてはパワースライドドアが開かないときの原因について見ていきましょう。
考えられる原因と対処法についてまとめてみましたので、下記にてご覧ください。
考えられる原因 | 対応策 |
---|---|
ケーブルの劣化・損傷 | ケーブル交換またはASSY交換 |
モーターの故障 | モーター交換またはASSY交換 |
コントローラ(制御装置)の故障 | コントローラの修理・交換またはASSY交換 |
リリースアクチュエータの故障 | リリースアクチュエータの修理・交換またはASSY交換 |
ゴムパッキンの劣化 | ゴムパッキンの修理・交換またはASSY交換 |
ヒューズ切れ | ヒューズ切れの解消 |
スライドレールへの異物混入 | スライドレールの清掃など |
ボディやフレームのゆがみ | フレーム矯正 |
〇パワースライドドア・ユニットの故障
モーターやケーブル、クラッチなどを駆動させるPSDユニットはパワースライドドアの中核を担う装置で、このユニットが故障すると、ドアが開かなくなってしまいます。
ユニット内の点検を行い、故障箇所のパーツ交換を・・・というよりは、ユニットごと交換、あるいはユニットを含めたASSY交換(パワーステアリングをまるごと交換)となるケースがほとんどかもしれません・・。
〇コントローラ(制御装置)の故障
開閉スピードの制御、異物挟み込み検知、運転席のスイッチによるワンタッチ操作など、パワースライドドアの頭脳とも言うべき「コントローラ」
このコントローラが故障してしまって、ドアが開かないというケースがあります。
コントローラ交換あるいはASSY交換という形で修理することになる場合がほとんどです。
〇リリース・アクチュエータの故障
パワースライドドアのドアロックや通電などの役割を果たしているリリース・アクチュエータ。
リリースアクチュエータの故障もまた、ドアが開かない原因の一つとなり得ることがあります。
〇ゴムパッキンの劣化
車内に雨水などが入ってこないようにパワースライドドアの周囲を取り囲むように施されて、防雨機能を担っているゴムパッキン。
そんな大切な役割を果たしているゴムパッキンですが、タイヤなどと同様、年数の経過や気候、走行環境などにより次第に経年劣化が進むのは避けられません。
そして、その劣化が深刻になるとドアが開けにくくなったり、ドアが開かないといった症状に発展することがあります。
ゴムパッキンの交換で済む場合と、車種によってはガラスも含めてASSY交換となる場合があります。
〇ヒューズ切れ
自動車の電気回路に過電流が流れた時に、電気回路を遮断して通電を阻止し、発火や溶解を防ぐという大切な役割を果たしているヒューズ。
そんなヒューズが”飛ぶ”ことで、パワースライドドアが使えなくなってしまうというケースがあります。(ドアとは別の箇所で純正品以外の部品追加や交換を行った後に、そのパーツが原因で過電流が流れるということはよくあります。)
ヒューズが飛んだ原因の究明と事後の問題解決、ヒューズの交換をすれば、元通り使えるようになります。
〇スライドレールへの異物混入
スライドドアという形状から起きるトラブルの一つでスライドレースに異物が混入し、それをシステムが異常と検知し、ドアが開かないというケースがあります。
この場合は、スライドレールが大きく損傷しているということでもなければ、異物を取り除くなどの処置で済むでしょう。
ただし、電動から手動に切り替え、力任せに開け閉めするとレールそのものが歪曲してしまい、ドアごと交換になってしまいかねませんので、注意が必要です。
〇ボディやフレームのゆがみ
車のサイドを自分でぶつけたり、他の人からぶつけられたりすることでボディやフレームのゆがみが生まれ、それが原因でパワースライドドアが開かないというケースもあります。
この原因は意外に発見されにくく(修復歴のある中古車などは特に注意)、ドアをASSY交換したばかりなのに、またしばらくして、パワースライドドアが重い、開けにくいといったことがあるときは、このボディやフレームのゆがみが原因のことがあります。
ドアが開かないときの修理は誰にお願いする?
では、続いてはドアが開かないときの対応策について見ていきたいと思います。
具体的にどんな方法があるのかということを表にまとめましたので、下記にてご覧ください。
対応策 | 注意点 |
---|---|
JAFのロードサービス | 会員は実費のみ。非会員はサービスも有料。(エリアによっては現金払いのみ) |
自動車保険(任意) | 加入していれば実費で対応可能な場合も。ただし、翌年度以降の保険料に影響ある可能性。 |
ガソリンスタンドやカーショップ | 応急処置的な対応は可能だが、本格的な修理を依頼するのは慎重に。 |
整備工場 | 料金や支払い方法は対応業者によって異なる。 |
ディーラー | コストはやや割高感があるが、きっちりと対応してくれることが多い。(稀に"ハズレ"もあるので注意) |
自分 | 内容次第。場合によっては、被害を拡大させてしまうことも・・。 |
それぞれについて見ていきたいと思います。
〇JAFのロードサービス
ロードサービス大手の「JAF」に加入していれば、例えば、自宅以外の場所でドアが急に開かないという状況になり、原因がバッテリー交換のときは一般道路でも高速道路でも実費のみで対応が可能です。(約1万円ほどで対応可能)
ただ、加入していない場合は、部品代などの実費以外に作業料金や基本料金などが有料になってしまいまして、非会員の場合は、場所や修理の内容にもよりますが、一般道路で1万円~3万円、高速道路で2~4万円程度の料金は必要になってくるでしょう。
なお、大がかりな修理が必要な場合は牽引など別の方法になります。
ちなみに、支払いについてですが、エリアによっては「後払い不可」の地域もありますので、手持ちのお金が少ないときは手配をお願いする前に確認をした方がいいでしょう。
〇自動車保険(任意)を利用する
自宅以外での修理を希望するとき、加入している自動車保険(任意保険)にロードサービスが付帯している場合は、それを利用することで、パーツ以外の費用をかけることなく、問題を解決することができます。
また、修理工場やディーラーで修理を行った場合でもその代金の支払いに自動車保険を利用すれば、費用負担はほとんどすることなく修理することが可能です。
ただし、修理費用や修理の内容次第ですが、保険会社によっては翌年度以降の等級(保険料)に影響が出て、保険を利用しない方が安上がりだった・・ということがありますので、その点は注意が必要になるでしょう。
〇ガソリンスタンドやカーショップへ修理依頼
スマートキーの電池交換やバッテリー交換であれば、近くのガソリンスタンドやカーショップでも対応は可能です。
ただ、修理の内容が大がかりな場合は対応不可、あるいは予想外の費用負担になる可能性もありますので、その点はあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。
〇整備工場などへの依頼
ドアが開かない原因が全く分からず不安なので、できれば車両は信頼できる業者に引き取りをお願いしたいという場合はネットで業者を探すという方法もあります。
方法としては、カーセンサーなどで近くの車検屋さんの中から、「引き取り」とが可能な車検業者を検索して、引き取りに来てくれる業者を探すという流れになります。
参考/カーセンサー
また、カーセンサーでは、クレジットカード決済が可能な業者も探すことができますので、手持ちの現金に不安がある場合にも重宝します。
ちなみに、車検の予定日が近い場合は、一緒に車検をお願いすれば工賃を節約することもできるかもしれません。
なお、車検の有効期間の満了日を確認するには、下記の画像の赤枠で囲んだところを確認しましょう。
車検は、新車登録を行った年から3年、それ以降は2年ごとに有効期間の満了日を迎え、更新は満了日の1ヶ月前から受けることができまして、また、満了日が1ヶ月以上前であっても、次の車検満了日が早くなるだけで車検そのものは受けることが可能です。
〇ディーラーへの依頼
ドアが開かなくなった車の製造元であるメーカー系列のディーラーに持ち込むのは、最もよく利用される方法です。
ただ、少しの修理で済むはずの内容であっても、ディーラーによっては、ASSY交換(ドアごと)をすすめてくるケースがあったりしますので、その点は理解しておく必要があります。
とは言いましても、安全には変えられませんので、多少の費用負担は覚悟しても、きっちりと修理したいというときは、ディーラーが最も信頼できる依頼相手になるのがほとんどのケースだと思います。
〇自分で修理する
リモコンキーの電池交換などは自分でできますが、電子機器などを自分で修理するというのは、専門家でない限りはやめておいた方が無難です。
最悪のケースは、自分で直そうとして、ドアを力任せに引っ張ったりすることで、軽度から重度の故障へ問題が深刻化し、費用も修理期間も”かさんでしまう”ケースです。
原因が特定できないのであれば、まずは、プロの手に委ねるというのが賢明な判断です。
ドアが開かないときの修理代について
ドアを修理する代金については、その内容、修理を依頼先によって開きがありますが、その修理代のおおまかな目安を掴むため、その内容ごとの費用感を下記の通り、まとめてみました。
修理の内容 | 修理代の目安(工賃は別途) |
---|---|
電池交換 | 数百円~ |
バッテリー交換 | 10,000円~ |
オルタネーターの修理・交換 | 45,000円~ |
ECUやコンピューターの修理・交換 | 100,000円~ |
イモビライザー(盗難防止装置)の修理・交換 | 10,000円~ |
各種パーツ交換 | 1,000円~ |
ドアのASSY交換 | 100,000円~ |
フレームのゆがみ補正(検査代など) | 20,000円~ |
工賃についての補足としては、輸入車や一部の高級車や希少車の場合、交換対象のパーツそのものよりも、技術料、特殊工具費用などが重く、むしろ工賃の方が高くなるというケースは決して珍しくありません。
さらなるトラブルを招く前に・・・
中古車の資産価値に大きな影響を与えるクルマの「修復歴」
実は筆者は過去に、度重なる故障やトラブルが買取価格の大きな下落を招くことがあったことから、最近は修理をする前に資産価値を確認するようにしています。
特に筆者が自分の愛車の価値を"こっそり"と知るために重宝しているのが、匿名査定の「UcarPAC」という無料サービス。
独自の仕組みから予想外の高値がつくことも多く、これまで車の買い替えのときには、何度も助けてもらいました^^
高額の修理代を払って"修理する前に"試してみるだけの価値はあります。
参考サイト/「UcarPAC」
まとめ
「車のドアやパワースライドドアが開かない原因と修理代などのまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
自動車の最も重要なパーツの一つであるドアに不具合が起きるというのは、その原因によっては、他の箇所にも不具合や故障が発生している可能性は決して低くはありません。
特に事故が原因だったり、運転していた環境が過酷だったりした場合は、クルマそのものの「寿命」を迎えている可能性もありますので、修理費用にもよりますが、車の買い替えなども天秤にかけながら、冷静に検討したいところです。