現代の車の大半に標準装備されていて、ドライバーの快適な運転をサポートしてくれるパワーステアリング。
パワーステアリングには、大きく分けて油圧式パワーステアリングと電動パワーステアリングの2種類がありますが、それぞれで故障の原因や症状が異なってきます。
今回はパワステに異常や異音が発生する原因と症状、そして、修理代などについて見ていきたいと思います。
油圧式パワーステアリングの故障の原因と症状
油圧パワーステアリングシステムの仕組みは簡略化しますと、下記のようなイメージになっておりまして、エンジンからの動力で油圧を発生させて、その油圧の力を生かして、ハンドル操作を”楽”にしているという仕組みになります。
仕組みとしては、エンジンからの動力を利用しているという意味では、車のエアコンと同じような構造になっています。
では、油圧式のパワーステアリングの故障の症状と原因について見ていきましょう。
症状 | 考えられる原因 |
---|---|
異音「ウオーン」「ウィーン」 | オイル不足 |
異常「ガクガク」「カクカク」 | ステアリングジョイントの故障など |
異音「キーキー」「キュルキュル」 | ベルトの故障など |
パワステが戻らない・戻りが悪い | アライメントまたはサスペンションの故障など |
パワステが重い | ○ポンプが劣化 ○パワステフルードのゴムホースが劣化 ○シャフトやステアリングコラムの劣化 ○その他の原因による油圧の低下 |
パワステの異常や異音の大半の原因は、パワステのオイル不足によるもので、オイルを補充してあげれば、解決することがほとんどです。
参考/パワステオイルの漏れで車が故障?オイル漏れの原因と修理費用などのまとめ
しかし、各パーツを連結するホースやシャフトといった連結部分で故障が発生している場合は、せっかく起こした油圧が伝わらずに、ハンドルにパワーが出ないということもあります。
いずれにしても、ハンドルを操作して、調子が悪いと感じたら、早めに修理屋さんなどで見てもらうことをお勧めします。
ちなみに、パワステのオイル不足のまま走行を続けていくと、最悪の場合、バッテリーが上がってしまって一時的に車が動かなくなってしまう他、燃費がどんどん悪くなっていくことが想定されます。
電動パワーステアリングの故障の原因と症状
油圧式のパワーステアリングの欠点である燃費の悪化を補う形で、急速に普及が進んでいるのが、電動パワーステアリングです。(その他にもメリットは数多くあります)
電動ステアリングの故障の症状と原因は、油圧式とは異なり、ほとんどの場合は、電気系統の故障が原因となっています。
表にまとめましたので、下記をご覧ください。
症状 | 考えられる原因 |
---|---|
パワステが重い | ○パワステギアボックスの故障 ○パワステコントローラ(ECU)の故障 ○センサーの故障 ○モーターの故障 ○減速機の故障 など |
異常「ガクガク」「カクカク」 | ステアリングジョイントの故障など |
異音「キーキー」「キュルキュル」 | ベルトの故障など |
パワステが戻らない・戻りが悪い | アライメントまたはサスペンションの故障など |
なお、故障ではありませんが、電動ステアリングではハンドルの「据え切り(止まったままハンドルを切ること)」を繰り返すと、モーターの温度が上がり、一時的にハンドルが重くなってしまうことがあります。
この場合は、しばらくの間、車を動かさないでいるとモーターの温度が下がり、ハンドルが軽くなるはずです。
この症状は決して故障ではありませんので、電動ステアリングの特徴の一つとして理解して頂ければと思います。
パワステが重いときの対処法と修理の費用について
ハンドル操作で異音や異常を感じたり、調子が悪いと感じたときは、早め早めに修理屋さんやディーラーに相談してみることが肝心です。
パワーステアリングの異常を放置したまま走り続けることは、油圧式にしても電動にしても、いずれ運転できなくなるか、あるいは、運転中にハンドルの操作ができないということに繋がる可能性があり、大変危険です。
実際にパワーステアリングが運転中に効かなくなる恐れがあるという理由でのリコールは、GM,トヨタ、スズキ、三菱自動車、フォード、フォルクスワーゲンなどが毎年のように実施しておりまして、膨大な数に上ります。
それでは、パワステの修理費用について見ておきたいと思います。
症状 | 参考価格 |
---|---|
パワステオイル交換 | 3,500円~ |
ステアリング交換 | 3,500円~ |
ラックブーツ交換 | 7,500円~ |
サイドスリップ調整 | 3,500円~ |
サスペンション交換 | 20,000円~ |
ドライブシャフト・ブーツ交換 | 9000円~ |
タイロットエンドASSY交換 | 4,000円~ |
パワステギアボックス修理・交換 | 70,000円~ |
パワステポンプ交換 | 30,000円~ |
パワステコントローラ交換 | 70,000円~ |
工賃(人件費) | 別途 |
パワステの修理と一口に言いましても、その対象となる範囲は幅が広く、修理代にもかなり開きがあります。
ご覧頂きました通り、電動ステアリングのパーツ交換となりますと、モノによってはかなりの金額になりますので、まずは懇意にしている修理屋さんやディーラーに見積もりをお願いするところから、はじめてみるのがいいと思います。
パワステの修理代が高額になるとき・・・
パワステの修理代がかなり高額になるときは、高い修理代金を支払って、そのまま今の車に乗り続けるか、あるいは、車を乗り換えるべきかということも検討すべきです。
ご存じの通り、中古車の価値は時間とともに下がっていきますので、仮にパワステの故障の分だけ、査定価格が下がったとしてもすぐに買い換えた方が、結果的に数年後に売却するよりも高く売れる可能性は高いです。
実際にそうしたケースが多いので、ディーラーや中古車販売店などでは、自動車のローンが残っている場合でも、買い替えの際に次の新しい車にローンを上乗せしてくれるサービスを提供しているほどです。
なお、パワステに不具合がある車を高く売るコツですが、修理はしないで、”そのまま”の状態で、複数の業者に買い取りの見積もり依頼をお願いしましょう。
1社だけですと、どうしてもパワステの不調を理由に、安く見積もられる可能性がありますが、複数の業者に見積もりをお願いすることで、高く買い取りしてくれる業者が出てくる可能性が高くなります。
なぜそうしたことが起こるかと言いますと、例えば大手の買取業者では、自社で修理工場を持っていたり、提携している修理工場がありますので、かなり格安の料金でパワステを修理できてしまう可能性があるからです。
また査定士の中には、パワステに問題を抱えていても、年式や、外装・内装などから高く評価してくれる人もいたりする可能性があります。
パワステの修理費用が高額になる場合は、修理する以外の選択肢も慎重に検討したいところです。
参考サイト/「ズバット車買取比較」
さらなるトラブルを招く前に・・・
中古車の資産価値に大きな影響を与えるクルマの「修復歴」
実は筆者は過去に、度重なる故障やトラブルが買取価格の大きな下落を招くことがあったことから、最近は修理をする前に資産価値を確認するようにしています。
特に筆者が自分の愛車の価値を"こっそり"と知るために重宝しているのが、匿名査定の「UcarPAC」という無料サービス。
独自の仕組みから予想外の高値がつくことも多く、これまで車の買い替えのときには、何度も助けてもらいました^^
高額の修理代を払って"修理する前に"試してみるだけの価値はあります。
参考サイト/「UcarPAC」